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50歳代になったら、腎細胞がん・膀胱がんに注意

50歳代になったら、腎細胞がん・膀胱がんに注意

 腎臓がん(腎細胞がん)や腎盂がん、尿路がん、膀胱がんなど、いわゆる泌尿器系のがんは、50歳代から70歳代が好発年齢。膀胱がんは60歳以上で増化傾向にあります。個々のがんについては、肥満や遺伝性疾患、職業性暴露(職業的に、特定の物質にさらされること)、特定の薬などが挙げられています。しかし、これらのがんに共通し、確立したリスク要因は、「喫煙」です。

腎細胞がん予防には、禁煙と減量が重要

 腎臓は大きく分けると、尿を作る尿細管組織である「腎実質」と、尿が集まり尿管へとつながっている「腎盂(じんう)」から構成されています。腎実質に発生するがんを「腎がん(腎細胞がん)」、腎盂に発生するがんを「腎盂がん」といいます。

  • 腎細胞がんの確立したリスクは、喫煙と肥満
    腎細胞がんの好発年齢は50歳代から70歳代で、女性よりも男性に多くみられます。腎細胞がんの確立したリスク要因として示されているのは、喫煙と肥満です。
    予防法としては、まず、喫煙者は「禁煙」することが大切です。また、肥満者は、減量することが必要です。

 そのほかに、高血圧、降圧薬の服用、利尿薬の服用(特に女性の場合)、フェナセチン含有鎮痛薬の服用などが挙げられています。
 また、職業性暴露もリスク要因としての可能性が指摘されており、アスベストやドライクリーニング従事者によるテトラクロロエチレン暴露などが挙げられています。

  • 遺伝性の疾患も、リスク要因
    また、腎細胞がんは、発生しやすい家系があることがわかっており、遺伝性の疾患もリスク要因とされています。代表的な疾患に、フォン・ヒッペル・リンドウ病(*1)、結節性硬化症(*2)、多発性嚢胞腎(*3)などがあります。
    遺伝子解析をすれば、これらの疾患が発病する前に、将来、腎細胞がんになるかどうかの予測できます。

(*1)小脳血管芽腫(がしゅ)、網膜血管腫、腎細胞がんを含め、膵臓、肝臓、肺などに多発性の腫瘍が発生する遺伝性の疾患。
(*2)てんかん発作、知的障害、皮膚症状の3つを主な症状とする遺伝的な疾患。
(*3)左右の腎臓に、多数の嚢胞(体液がたまった袋)ができる遺伝疾患。

尿路上皮がんは、特に高齢男性に多い

 腎臓で作られた尿は、腎盂に集まり、尿管を通って、一時的に膀胱にためられます。これら腎盂、尿管、膀胱の内腔は、伸縮性のある「移行上皮」という粘膜で覆われています。この移行上皮から発生した悪性腫瘍を、総称して「尿路上皮がん」といいます。
 腎盂、尿路、膀胱のそれぞれの部位で単発にがんが発生することもあれれば、粘膜の性質が同じであるため、同時に発生することもあります。
 尿路上皮がんの予防に最も重要なことは、喫煙者は禁煙することです。

  • 腎盂・尿路がん
    腎盂・尿路がんの罹患率は、50歳代から70歳代で高くなり、男性に多くみられます(罹患率は、女性の2倍)。腎盂・尿管がんの確立したリスク要因として、喫煙とフェナセチン含有鎮痛剤が挙げられます。その他、可能性のあるリスク要因として、高血圧、飲料水中のヒ素、膀胱がんと同じような職業性暴露が報告されています。
  • 膀胱がん
    膀胱がんは、尿路上皮がんの中で最も多くみられます。罹患率は、男女ともに60歳以上で増加し、男性に多くみられます(罹患率は、女性の約4倍)。
    膀胱がんの確立したリスク要因は、喫煙とされています。男性の50%以上、女性の約30%の膀胱がんは、喫煙のために発生すると試算した研究もあります。

 また、染料を使う製造工場や化学工場、ゴム工場、薬品工場などで扱われることの多いナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニルなどの化学物質にさらされる職業性暴露も確立したリスク要因とされています。
 そのほか、フェナセチン含有鎮痛剤、抗がん薬の一種であるシクロホスファミド、コーヒー、塩素消毒した飲料水が、リスク要因候補として挙げられていますが、疫学研究では、明らかな結果は得られていません。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。