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5つの健康習慣とがん発生リスク

5つの健康習慣とがん発生リスク

 喫煙、飲酒、食事、身体活動、肥満度の5つの要因が、がんの発生に確実に関係していることは、国内外の研究で示されています。5つの要因のうち、今より1つでも良いほうに生活習慣を変えられれば、がんの発生リスクは確実に低下します。今からでも遅くはありません。あなたの生活を見直して、改善しましょう。

喫煙、飲酒、食事、身体活動、肥満度と、がん発生の関係を追跡調査

 国立がん研究センターが行っている多目的コホート研究として、日本各地の45~74歳の男女で、がんや循環器疾患の既往のない約8万人を対象に、10年間にわたり追跡調査しました。そのデータに基づき、5つの生活習慣(喫煙、飲酒、食事、身体活動、肥満度)と全がん発生率との関連を調べました。
 その研究では、5つの健康習慣を過去の研究結果をもとに、次のように定義しました。ちなみに、WHO(世界保健機関)やWCRF(世界がん研究基金)、AICR(米国がん研究財団)などの食事指針に、日本人を対象に行った研究成果を加えて策定されたがん予防指針「日本人のためのがん予防法」では、これら5つの要因に、「感染」を加えた6項目をがん予防の鍵としています。

5つの健康習慣

  • 非喫煙 (過去の喫煙は含まない)
  • 節酒 (エタノール換算で150g/週 未満)
     日本酒1合は、エタノール量に換算して23gです。これを毎日飲む場合、エタノール換算で161g/週になって、ほぼ目標値になります(厳密には、1週間内に1日飲まない日を作ることで目標値未満になります。また、それ以上の量を飲む日がある場合は、飲まない日を複数作る必要があります)。
  • 塩蔵品を控える (0.67g/日 未満)
     たらこ1/4腹(20g)を月に1回食べる量は、1日に約0.67gを毎日食べる量に当たります。
  • 活発な身体活動 (男性:37.5メッツ・時/日以上、女性:31.9メッツ・時/日以上)
     たとえば、活発な身体活動をする会社員(1日に筋肉労働や激しいスポーツ:1時間以上、座っている:8時間以上、歩いたり立っている:1時間未満)の活動量はちょうど37.5メッツ・時/日になります。また、典型的な主婦の活動(筋肉労働や激しいスポーツ:なし、座っている:3時間以下、歩いたり立っている:3~8時間)は、31.4メッツ・時/日になります。
  • 適正BMI  (男性:21-27、女性:19-25)
     肥満指数(BMI)は、体重kg÷(身長m×身長m) で計算します。

実践している健康習慣の数が多いほど、がんの発生リスクは下がる

 この研究では、5つの健康習慣のうち、実践している項目が「0または1つ」、「2つ」、「3つ」、「4つ」、「5つ」のグループに分け、がん発生のリスクを調べました。「0または1つ」のグループのリスクを1とすると、それぞれのグループのがんの相対リスクは男性で0.86、0.72、0.61、0.57、女性で0.86、0.73、0.68、0.63と、直線的に低下(反比例)する結果となりました。計算上平均して、健康習慣を1つ実践するごとに、がんのリスクは男性で14%、女性で9%低下するということになります。
 「60歳未満」と「60歳以上」の年齢分けで見ると、男性では両者の結果に差は見られませんでした。女性では「60歳未満」では健康習慣の数により、がん発生リスクが低下する傾向はありますが、統計学的に有意といえるほどではありません。
 今回の追跡調査中に「60歳未満」の女性に発生したがんの21%は「乳がん」で、最も多くを占めていました。乳がんの大きなリスク因子としては、エストロゲン(女性ホルモンの1種)が関係することが知られていますが、今回の5つの習慣の中には入っていないことから、60歳未満の女性では、はっきりした結果が得られなかったと考えられます。
  60歳以上でも、これらの5つの健康習慣を実践すれば、がんの発生リスクを下げてがん予防効果が得られることが示されました。今さらと諦めずに、いつでもこれまでの生活習慣を見直し、改善に努めることは有意義です。
 健康づくりには悪影響だとわかっていても、長年身についた生活習慣は、なかなか変えられないものです。5つのうち、今より1つでも良いほうに生活習慣を変えられれば、がんの発生リスクは確実に低下します。今からでも遅くはありません。あなたの生活習慣を見直し、改善し、そしてがんのリスクを下げましょう。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。