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喫煙開始年齢と肺がん発生リスクの関係

喫煙開始年齢と肺がん発生リスクの関係

 未成年期での喫煙開始は、喫煙期間の長期化や喫煙量の増加を招き、肺がんリスクを高めていることが確認されています。特に若い年齢で肺がんにかかるリスクを高める可能性が示されています。肺がんだけでなく、がん予防には、未成年も成人も、喫煙しないことが重要です。

未成年期に喫煙を開始すると、肺がんの発生リスクは高くなる?

 喫煙が多くのがんの発生リスクであることは、わかっています。特に肺がんでは確実なリスク要因です。一般に、喫煙期間が長く、1日の喫煙本数が多い人ほど、つまり生涯の喫煙量(喫煙年数と本数の積)が多いほど、肺がんの発生リスクが高まることが多くの研究で報告されています。「1日のたばこの本数×喫煙年数」の数値が600以上の場合は、肺がん発生のハイリスク群とされます。

 では、未成年期に喫煙を開始した場合と、成人になってから喫煙を開始した場合の、肺がん発生リスクに差はあるのでしょうか。
 喫煙開始年齢が若いことが、肺がんのリスクであるとする報告はありますが、それは、喫煙開始年齢が若いほど喫煙期間が長くなることの影響なのか、未成年期に喫煙すること自体の影響なのかについての検討はほとんどありませんでした。

17歳以下での喫煙開始は、20歳以降の喫煙開始と比べ、肺がん発生リスクが高い

 そこで、日本各地(分散された特定の地域)の40~69歳の男女約4万人を対象に、平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に調査を開始し、平成16年(2004年)まで追跡調査した多目的コホート研究の結果に基づき、喫煙開始年齢とがん発生率との関連を調べた研究を見てみましょう。  

 約14年間の追跡期間中に、この研究対象者のうちの681人に、肺がんが発生しました。
 研究開始時のアンケートでは、ほとんどの喫煙者が20歳以降に喫煙したと回答する一方、男性の28%、女性の8%は未成年期に喫煙を開始したと回答していました。
 この研究では、喫煙開始年齢を「20歳以降」、「18-19歳」、「17歳以下」の3つのグループに分けて、肺がんの発生率を比較しています。
 「17歳以下」で喫煙を開始したグループでは、「20歳以降」で喫煙を開始したグループに比べて、肺がんリスクは男性で1.48倍、女性で8.07倍高いことが示されました。ただ、未成年期に喫煙を開始した人のほうが、1日当たりの喫煙本数が多く、喫煙期間も長いという特徴があったため、これらの特長を除き、未成年期の喫煙開始という要素だけで、肺がん発生リスクを評価することは非常に困難です。

 そこで男性喫煙者を対象に、調査時点の年齢を「40歳代」、「50歳代」、「60歳代」の3グループに分け、それぞれのグループで喫煙開始年齢ごとの肺がん発生リスクを求めてみました。
 その結果、調査時点の年齢が高いほど(喫煙期間が長いため)、肺がん発生率が高いということに加え、同じ年齢グループでは、特に「50歳代」においては、喫煙開始年齢が若いほど、肺がん発生率が高いという統計学的に有意な傾向が示されました。

年齢に関係なく喫煙しないこと、喫煙している人は直ちに禁煙することが重要

 この方法でも、喫煙期間の長さとは独立して、未成年で喫煙を開始すること自体が、肺がん発生リスクを高める要因となるかどうかについて、明らかな根拠は得られませんでした。
 しかし、未成年期の喫煙開始は、喫煙期間の長期化や喫煙量の増加につながっていることは確認され、肺がん発生リスクを高めていることは明らかです。特に、未成年で喫煙を開始した人は、肺がん発生リスクが高いというだけでなく、若い年齢で肺がんにかかりやすいということも示唆されています。
 がん予防のために最も重要なことは、年齢に関係なく喫煙を開始しないこと、喫煙している人は直ちに禁煙することです。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。