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緑茶・コーヒー摂取と甲状腺がんとの関連

緑茶・コーヒー摂取と甲状腺がんとの関連

日本で行われた多目的コホート研究では、男女ともコーヒー摂取と甲状腺がん発生の関連は認められず、閉経前の女性では、緑茶をよく飲む人ほど甲状腺がんになりやすい傾向を認めた一方、閉経後の女性では、緑茶をよく飲む人ほど甲状腺がんになりにくい傾向がみられました。

緑茶やコーヒーの摂取と甲状腺がん発生との関連調査を実施

日本各地(分散された特定の地域)の40~69歳の男女約10万人を対象に、平成2年(1990年)と平成5年(19934年)に調査を開始し、平成19年(2007年)まで追跡調査した多目的コホート研究の結果に基づき、緑茶・コーヒー摂取と甲状腺がん発生との関係について調べた研究があります。

まず調査開始時に、緑茶を飲む頻度についての質問を行い、その回答から以下の4つのグループに分け、その後の甲状腺がんの発生率を比較しています。

  • 1日1杯未満
  • 1日1-2杯
  • 1日3-4杯
  • 1日5杯以上

約14年間の追跡期間中に、男性26名、女性133名が甲状腺がんになったことがわかりました。

閉経後女性は、緑茶をよく飲む人ほど甲状腺がんになりにくい傾向

緑茶摂取頻度と甲状腺がん発生との関連は、男性では認められませんでした。女性では、全体では関連は認められませんでしたが、閉経前と閉経後の女性に分けて、緑茶摂取と甲状腺がんの発生の関連をみたところ、閉経前の女性では、緑茶をよく飲む人ほど甲状腺がんになりやすい傾向を認め、閉経後の女性では、緑茶をよく飲む人ほど甲状腺がんになりにくい傾向が認められました。

甲状腺がんは、男性よりも女性に多く発生する傾向があるため、女性ホルモン(エストロゲン)が、甲状腺がん発生に関わっているのではないかと考えられています。また、緑茶に含まれるカテキン類(ポリフェノールと呼ばれる一種)は、血中エストロゲン濃度に影響するという報告があります。
これらのことから、血中エストロゲン濃度に大きな差がある閉経前と閉経後の女性では、緑茶摂取と甲状腺がんの発生の関連が異なる可能性がありますが、まだ明確な理由はわかっていません。

一つの仮説として、甲状腺がん発生に関与している「受容体」の違いによるかもしれないとしています。閉経前甲状腺がんでは、エストロゲン受容体αの発現が多いことが報告されています。緑茶に含まれるカテキン類には、エストロゲンに似た作用があり、閉経前の女性では、緑茶のカテキン類がエストロゲン受容体αと結合して、甲状腺がんの発生および増殖を促進している可能性があると考えられます。
一方、閉経後甲状腺がんでは、上皮成長因子受容体の発現が確認されており、閉経後の女性では、緑茶のカテキン類が上皮成長因子受容体と結合して、甲状腺がんの発生および増殖を抑制している可能性があると考えられます。

男女ともに、コーヒー摂取と甲状腺がん発生には関連なし

また、調査開始時に、コーヒーを飲む頻度についての質問を行い、その回答から以下の3つのグループに分け、その後の甲状腺がんの発生率を比較しています。

  • ほとんど飲まない
  • 週1~4日に1杯
  • 毎日1杯以上

男女とも、甲状腺がん発生率との間に関連を認められませんでした。女性では、緑茶の摂取での解析と同様に閉経の前と後に分けて解析されていますが、関連は認められませんでした。

この研究では、女性では緑茶摂取について、閉経前と閉経後で甲状腺がん発生との関連が異なる可能性を示されましたが、甲状腺がん予防につながる生活習慣を提示するところもでは至っておらず、今後の研究が期待されます。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。