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総コレステロール値と肝がん発生のリスクは関係するの?

総コレステロール値と肝がん発生のリスクは関係するの?

総コレステロール値が低いと、肝がんリスクが高まることが研究で示されました。肝がんの大きな原因はC型肝炎です。C型肝炎ウイルスの感染が血中コレステロール値の低下をもたらすことが知られており、その影響ではないかと考えられています。

総コレステロール値とがん発生との関連を調査

日本各地(分散された特定の地域)の40~69歳の男女約3万人を対象に、平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に既往症や生活習慣などについてのアンケート調査を実施し、平成16年(2003年)まで追跡した調査結果にもとづいて、総コレステロール値とがん発生との関連を調べた結果を分析した多目的コホート研究があります。

血中の総コレステロール値とがん死亡との関係について、これまで多くの研究発表があります。それは主に、がんの発生、特に大腸がんや進行がんの進展にともなって、総コレステロール値が低下することを示した報告です。
一方、総コレステロール値とがん発生に関する研究は少なく、総コレステロール値の低下により免疫機能が低下し、がん発生のリスクを上げる可能性を示した報告や、反対に、総コレステロール値の低下により、がん細胞の増殖が抑制され、さらに細胞の正しい分化を促進させて、がんの発生リスクを下げると考える研究結果もありますが、科学的根拠(エビデンス)を示すには不十分でした。

この研究では開始時に、参加者の約30%の人から総コレステロール値のデータを得ており、総コレステロール値を少ないほうから多いほうに6つのグループに分けて、その後のがん発生の相対リスクおよびその傾向について解析しました。
研究対象男女33,368人(男性11,683人、女性21,685人)のうち、平均で約12年半の追跡期間中、2,728人(男性1,434人、女性1,294人)に、何らかのがんが発生したことがわかりました。部位別に見ると、胃がん557人、大腸がん 506人、肺がん320人、乳がん178人 、前立腺がん164人 、肝がん125人、子宮頸がん55人、白血病50人です。

総コレステロール値が低いと、男女ともに肝がんリスクが高いのはなぜ?

その結果、がん全体で見ると、血中の総コレステロール値が低いことと、がん発生との関連は男性だけに認められましたが、研究開始3年以内に発生したがんと進行がんのケースを除くと、この関連性は弱くなりました。

臓器別に見ると、男女の肝がん、男性の胃がんで関連性が強く認められました。研究開始3年以内に発生したがんと進行がんのケースを除くと、胃がんとの関連性は弱まったものの、肝がんとの関連性は強く認められました。前立腺がん(男性)では、総コレステロール値が高いほど、前立腺がんの発生リスクが高まることが示されました。ただし、進行がんのケースを除くと関連性は弱まりました。ウイルスへの感染や飲酒習慣を考慮しても、総コレステロール値が低いことと肝がんとの関連性が認めされました。

総コレステロール値が低いと肝がんリスクが高まる理由として、肝がんの前に起こる肝硬変や、さらにその肝硬変の前に長期にわたって起こる慢性C型肝炎では、ウイルス感染が血中コレステロールの低下をもたらすことが知られており、その影響ではないかと考えられています。
逆に、コレステロール値が低いことによって、C型肝炎ウイルスが肝細胞のLDLレセプター(レセプター:受容体)や酸化LDLレセプターと結合しやすくなり、持続的な肝炎をひき起こしやすくなる可能性もあるとしています。

 

【グラフの出典】独立行政法人 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 予防研究グループ 多目的コホート研究「総コレステロール値とがん発生リスクとの関連」 http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/357.html

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。