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肺がんの家族歴がある人は肺がんになりやすい傾向がある

肺がんの家族歴がある人は肺がんになりやすい傾向がある

 肺がんは、日本人のがん死亡の第1位を占めます。肺がん発生のメカニズム解明に向けて、家族に肺がんにかかった人がいるかどうか(肺がん家族歴)が、肺がんの発生にどれくらい影響するかの調査研究が行われました。その結果、肺がん家族歴ありのグループは、肺がんになりやすい傾向があることがわかりました。

肺がんの罹患数は、大腸がんを抜いて第2位へ

 新たに肺がんにかかる人の数が、年々増加しています。最新の統計予測によると、日本人で2014年に新たに肺がんと診断される人の数(罹患数)は、大腸がんの数を抜いて第2位になると予測されています。
 年間の罹患数の第1位は胃がんの130,700人(予測数)ですが、第2位の肺がんは129,500人(予測数)で、ほぼ同数にまで近づいています(国立がん研究センターがん対策情報センター「2014年のがん統計予測」より)。

 また、2013年にがんで亡くなった人のうち、最も多かったのは肺がんで72,734人、第2位は胃がんで48,632人でした(厚生労働省「平成25年人口動態統計」より)。統計予測でも2014年の死亡数の順位は同じですが、それぞれの数は2013年より増えると予測されています。

肺がん家族歴がある人は肺がんになる危険性が2倍

 肺がんの最大の危険要因は、喫煙であることがわかっています。しかし、それ以外にも食生活や大気汚染などのさまざまな環境因子や遺伝的な素因などが、肺がん発生のリスク要因になると考えられています。
 その一つで、家族に肺がんにかかった人がいる(家族歴がある)人は、ない人に比べて、肺がんにかかるリスクが高くなるのではないかといわれていました。しかし、家族歴が日本人の肺がん発生にどれくらい影響するのかはよくわかっていません。そこで、国立がん研究センターが行っている多目的コホート研究では、肺がんの家族歴と肺がん罹患との関連について調査を行いました。

 この調査では、対象となった40~69歳の男女約10万人を、両親もしくは兄弟・姉妹に肺がんにかかった人がいる(肺がん家族歴あり)グループと、かかった人がいない(肺がん家族歴なし)グループに分け、その後の肺がんの発生率を比較しました。対象者10万人のうち、肺がん家族歴がある人は、男女とも全体の2%でした。
 平成16年(2003年)までの11年間に肺がんにかかった人を調査した結果、肺がん家族歴ありのグループは、肺がん家族歴なしグループよりも約2倍、肺がんにかかりやすいことがわかりました。男女別にみると、肺がん家族歴がある男性は1.7倍、女性は2.7倍と女性のほうが危険性が高くなっています。

肺がん発生の要因は1つだけではない

 調査結果の数字から、両親もしくは兄弟・姉妹に肺がんにかかった人がいると、本人も肺がんになりやすい傾向がみられることがわかりました。そこからは、肺がんになりやすい共通の体質という、遺伝的要因の可能性が考えられます。一方で、女性においてリスクが高いことから家族の受動喫煙の影響、あるいは、家族間で喫煙をはじめとした生活習慣が似ているなどの、環境要因の影響も考えられます。
 肺がん家族歴がある人が肺がんになる危険性が高くなるのは、いくつかの要因が合わさったものだと考えられ、はっきりと理由がわかったわけではありません。今後さらに、肺がん発生のメカニズム解明についての研究が進むことが期待されます。

 肺がんは、早期であれば手術による治癒が期待できます。しかし、進行した状態で発見されることが多く、最も治療が難しいがんの一つといわれています。肺がんの最も有効な予防法は禁煙です。現在たばこを吸っている人は今すぐ止め、吸わない人はできるだけ受動喫煙の影響を受けないようにしましょう。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。