カルシウムとビタミンDを多くとる男性は大腸がんになりにくい
男性において、カルシウムを多く摂取するグループで大腸がんの発生リスクが低いことがわかりました。さらに、カルシウムの吸収に関与するビタミンDについても大腸がん発生リスクとの関連を調べたところ、カルシウムとビタミンDの両方を多く取っている男性に、大腸がんの発生リスク低下が見られました。
カルシウム摂取量が多い男性では、大腸がんのリスクが低下
これまで、欧米の研究では、カルシウムが大腸がん発生のリスクを低下する可能性が示唆されています。そこで、日本の多目的コホート研究(JPHC研究)では、カルシウムおよびカルシウムの吸収に関与するビタミンDの摂取量と、大腸がん発生リスクとの関連について検討しました。
研究では、平成2(1990)年と平成5年(1993年)に日本各地(分散された特定の地域)の40~69才の男女約8万人を対象に、平成14年(2002年)まで追跡調査したところ、男性464人、女性297人、合計761人に大腸がんが見つかりました。
研究開始から5年後に食習慣アンケートを行い、カルシウムおよびビタミンDの1日当たりの摂取量を算出し、グループ分けをしました。さらに、高齢や喫煙、肥満など、大腸がんのリスクを高める他の要因を除外して、男女別に大腸がんのリスクを比較しました。
まず、カルシウムについては、女性では大腸がん発生リスクとの関連がみられませんでしたが、男性ではカルシウムの摂取量が最も少ない(300mg未満)グループと比較して、最も多い(700mg以上)グループで、発生リスクが約40%低くなっていました。
大腸がんの発生には、胆汁酸が関与していると考えられています。脂肪を多くとると、肝臓で胆汁という消化液が作られて腸の中に排出されますが、その胆汁に含まれる胆汁酸が、腸内で発がん作用のある二次胆汁酸に変換され、大腸がん発生を促進する可能性があります。
カルシウムは、腸管の細胞を刺激してその二次胆汁酸を吸着したり、細胞の増殖や分化に直接作用したりして、大腸がんの発生を抑制しているものと考えることができます。
なお、男性のみにカルシウムと大腸がんの関連が見られたのは、女性は全体的にカルシウム摂取量が高かったのに対し、男性は極端に低い人が多かったことが理由の1つとして考えられます。
大腸がんのリスクは、カルシウムとビタミンDの両方を多く取る男性でさらに低下
ビタミンDと大腸がん発生との間には、男女とも、統計学的に有意な関連が見られませんでした。しかし、カルシウムとビタミンDの各摂取量を、低・中・高の3グループに分けて組み合わせて検討した結果、どちらも多く取っている男性では大腸がんのリスクが低下していました。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける役割をするため、ビタミンDとカルシウムの両方を多く取っている男性で大腸がんの発生が抑えられたと考えられます。
日本人はカルシウムが不足がち。積極的な摂取が勧められる
日本人の食事はカルシウムが不足がちであることは、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」の結果などから報告されています。 カルシウムの摂取量が多いと、循環器疾患や腰椎骨折の発生リスクが低くなることもわかってきています。カルシウムを積極的に取るようにし、ビタミンDも、食事や適度な日光浴などから得るようにしましょう。