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1条 たばこは吸わない

1条 たばこは吸わない

 たばこは、あらゆるがんの原因となります。たばこを吸う人のがん全体の発生率は、吸わない人よりも1.5倍ほど高くなり、がんによる死亡リスクも高まります。喫煙期間が長く、1日に吸う本数が多いほど、がんの発生リスクは高くなりますが、逆にたばこをやめればリスクが低下することもわかっています。たばこを吸っている人は、今すぐ禁煙しましょう。

たばこは、確実にがん全体の発生リスクを上げる

 たばこの煙には約60種類もの発がん物質が含まれており、これらの物質が体内に取り込まれることで、正常な細胞ががん化したり、がんの増殖が促進されたりして、がんが発生します。
 肺がんの原因のほとんどがたばこであることは、よく知られています。日本人を対象としたコホート研究* によると、喫煙者の肺がんの発生リスクは、男性では非喫煙者の4.5倍、女性では4.2倍となることがわかっています。

 また、国際がん研究機関(IARC)の研究報告によると、たばこは肺がんだけではなく、多数のがんの原因となることがわかっています(関連記事「たばことがん」)。
 日本人を対象とした研究においても、国立がん研究センターの「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」研究班は、「喫煙によってがん全体のリスクが上がることは『確実』」と評価しています。
 非喫煙者に対する、喫煙者のがん全体の発生リスクは、5つのコホート研究のメタアナリシス(統合解析)によると、1.5倍(男性1.6倍、女性1.3倍)と推計されました。がん死亡のリスクも、日本人を対象とした複数のコホート研究を統合したデータから、男性2倍、女性1.6倍程度と推計されています。
 たばこは、あらゆるがんの確実なリスクファクターとされる、最大の発がん物質なのです。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

喫煙期間が長い人でも、禁煙すればがんの発生リスクが低下する

 喫煙によるがん発生リスクは、喫煙期間が長く、1日に吸う本数が多いほど高まります。
 肺がんでは、「1日のたばこの本数×喫煙年数」(喫煙指数)が600以上(例:1日20本のたばこを30年間吸い続けると600)の人は高リスクであるとされています。

 しかし、そのようなヘビースモーカーの人であっても、禁煙すれば、がんの発生リスク低下が期待できます。
 禁煙した人を年数ごとに分けて肺がんの発生率を比較した研究では、禁煙から9年以内の人の発生リスクは非喫煙者の3倍、10~19年で1.8倍に低下し、20年以上は非喫煙者とほぼ同等という結果が出ています。「今さら禁煙してもむだ」ということはないのです。

 また、喫煙が脳卒中や心臓病、糖尿病、呼吸器疾患など多くの生活習慣病のリスクも上昇させることや、周囲の人のがん発生リスクを高めることも明らかとなっています(これについては「2条 他人のたばこの煙をできるだけ避ける」で詳しく解説します)。
 たばこを吸っている人は、自分のためにも周囲の人のためにも、今すぐ禁煙しましょう。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。