文字サイズ

5条 塩辛い食品は控えめに

5条 塩辛い食品は控えめに

 日本人を対象とした多くの研究で、塩蔵食品の摂取量が多いほど、胃がんになりやすいことが示されています。胃がん予防のために塩蔵食品をなるべく減らすと共に、高血圧・循環器疾患予防のためにも食塩の摂取量は、1日当たり男性で8.0g未満、女性で7.0g未満を目指しましょう。

食塩のとりすぎは、胃がんリスクを「ほぼ確実に」上昇させる

 食塩のとりすぎが高血圧につながり、脳卒中や心臓病を招くことは知られていますが、胃がんの発生リスクも高めます。これは、塩蔵食品などの高塩分の食事によって胃粘膜を守っている粘液が破壊されたり性状が変化したりすることで、胃酸やピロリ菌(ヘリコバクターピロリ菌)の持続感染による慢性炎症をもたらし、胃がんになりやすい環境になるためと考えられています。
 日本人約4万人を約10年追跡したコホート研究* において、男女別に食塩・塩蔵品の摂取量と胃がん発生率との関係を調べたところ、男性では食塩摂取量が高いグループで胃がんリスクも明らかに高く、約2倍になっていました。
 女性では、はっきりとした関連が見られませんでしたが、男女ともに、いくら、塩辛、練りうになどの、とくに塩分濃度の高い食品をとる人ほど、胃がんのリスクが高くなることが、よりはっきりと示されました (JPHC Study「食塩・塩蔵食品摂取と胃がんとの関連について」参照)。
 また、同一のコホート研究で対象地域と調査時期を変えて約8万人を6~9年追跡した研究でも、塩蔵魚や干し魚、たらこ等魚卵は、胃がんだけでなく、がん全体のリスクをも上げることが示されています (JPHC Study「塩分・塩蔵食品と、がん・循環器疾患の関連について」参照)。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

1日当たりの食塩摂取量の目標は男性8.0g未満、女性7.0g未満

 WHO(世界保健機関)では、1日当たりの食塩摂取量の目標値を5g未満と定めています。しかし、日本食の特性を考えると困難な目標といわざるを得ず、わが国では、厚生労働省が現在最新の「日本人の食事摂取基準2015年版」において、1日当たりの食塩摂取量の目標を男性8.0g未満、女性7.0g未満と定めています。
 実際には、日本人(成人)の1日の食塩摂取量の平均値は、男性11.1g、女性9.4gであり、男女ともに10年間で減少傾向にある(厚生労働省「平成25年国民健康・栄養調査結果の概要」より)とはいえ、非常に高いことに変わりありません。食塩摂取量はできるだけ減らし、少なくとも男性8.0g未満、女性7.0g未満を目指しましょう。
 梅干しやたらこ、いくら、塩鮭、塩辛、練りうになどは、塩分濃度で10%を超えるものも少なくありません。例えば、10gの梅干し1個に含まれる塩分の食塩相当量は2.2g、たらこ1/2腹(約40g)に含まれる塩分の食塩相当量は1.8gにもなります(文部科学省「日本食品標準成分表2010」より算出)。それらの高塩分食品の摂取は、週に1回未満に控えるようにしましょう。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。