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6条 野菜や果物は豊富に

6条 野菜や果物は豊富に

 野菜と果物の摂取が少ないと、特に、食道がん・胃がん・肺がんのリスクが高まることが示されています。野菜や果物を多くとることは、生活習慣病予防にもつながりますが、多くとればとるほどリスクが低下するかどうかという点は明らかになっていません。 野菜・果物は、1日に合計400gを目安に食べましょう。

野菜や果物を多く食べると食道がんの発生リスクが低下

 日本人を対象とした研究の系統的レビューによる因果関係評価によると、野菜や果物の摂取によって食道がんのリスクが低くなるのは「ほぼ確実」、胃がんはリスクが低くなる「可能性がある」とされています。また、肺がんは果物の摂取によりリスクが低くなる「可能性がある」とされています(「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」参照)。
 なかでも、45歳から74歳の男性約3万9000人を対象に、食道がんのうち日本人に多い扁平上皮がん(以後、食道がん)の発生と野菜・果物摂取との関連について調べた大規模なコホート研究*があります。
 この研究では、野菜・果物の1日あたりの摂取量の合計とそれぞれの摂取量について、3つにグループ分けを行い、関連を分析しました。その結果、野菜と果物の合計摂取量が最少のグループと比較して、最高のグループでは食道がんの発生リスクが約半分に低くなり、全体的に、野菜と果物の摂取量が1日当たり100g増加するごとに、食道がんのリスクが約10%ずつ低下していました(JPHC Study「野菜・果物摂取と扁平上皮細胞由来食道がんとの関連について」参照)。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

一定量より多くとっても、リスクの低下は変わらないという結果も

 とはいえ、野菜や果物を多くとればとるほどリスクが低下するという知見は限られており、一定の量より増やしてもリスクの低下には影響ないという結果も複数示されています。
 例えば、野菜や果物の摂取が週1日未満のグループと、週1日から2日のグループ、週3日から4日のグループ、ほぼ毎日摂取するグループとで胃がんの発生を比較したコホート研究があります。それによると、黄色野菜に限っては摂取頻度に応じて段階的にリスクが低下していましたが、緑色野菜やほかの野菜、果物では、週1日から2日摂取した場合と、 それ以上の頻度で摂取した場合とでは、リスク低下は同等でした(JPHC Study「野菜・果物と胃がん発生率との関係について」参照)。
 また、大腸がんと食物繊維の摂取量の関連を調べたコホート研究で、対象者を食物繊維摂取量によって5グループに分けて調査したところ、最も食物繊維摂取量の少ないグループは、 ほかのグループよりも大腸がんリスクが高くなりましたが、多くとるほどリスクが低下するという傾向はみられませんでした(JPHC Study「食物繊維摂取と大腸がん罹患との関連について」参照)。

野菜・果物の摂取目標は1日あたり400g程度。禁煙と節酒が優先

 脳卒中や心筋梗塞などをはじめとする生活習慣病全体の予防につながることを考えると、野菜や果物は毎日とることがすすめられます。
 健康日本21では、野菜を1日あたり350gとることを目標としており、「世界がん研究基金(WCRF)」と「米国がん研究協会(AICR)」では、野菜と果物を合わせて400gとることを推奨しています。野菜を小鉢で5皿分、果物1皿分を毎日食べると400g程度になるので、目安としてください。
 なお、食道がん・胃がん・肺がんは喫煙との関連が強く、食道がんは飲酒との関連も強いがんです。特に食道がんでは野菜や果物摂取による予防的効果は、禁煙・節酒による効果に及ばないことがわかっています。
 まずは禁煙・節酒を心がけたうえで、野菜や果物を多くとるようにしましょう。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。