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8条 適切な体重維持

8条 適切な体重維持

 肥満はさまざまな生活習慣病を引き起こすことで知られていますが、BMI(体格指数)と、がんによる死亡リスクや男性のがんの発生リスクとの関連をみると、「やせすぎ」も問題であることがわかります。太りすぎず、やせすぎず、中高年期のBMIは男性21~27、女性21~25を目標に体重を維持しましょう。

肥満は、閉経後乳がんや大腸がん、肝がんの発生リスクを上昇

 日本では、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」によって算出されるBMI(Body Mass Index:体格指数)が25以上になると「肥満」とされ(日本肥満学会「肥満症診断基準2011」による)、肥満の解消は糖尿病、高血圧、脂質異常症などの改善に効果があることが知られています。
肥満とがんの関係については、日本人を対象とした研究の系統的レビューによる因果関係評価によると、肥満は閉経後乳がんのリスクを上げることが「確実」、大腸がんおよび肝がんの発生リスクを上げることが「ほぼ確実」とされています(科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究「肥満指数(BMI)と乳がんリスク」「肥満指数(BMI)と大腸がんリスク」 、「肥満と肝がんリスク」参照)。

やせすぎも、全死亡やがん死亡のリスクを上昇させる

 また、BMIと全死亡リスクおよびがん死亡リスクとの関連については、次のようになりました(科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究「肥満指数(BMI)と死亡リスク」)。

  • BMIと全死亡リスクの関連
     国内の7つのコホート研究*を統合した結果によると、男女ともに、肥満の人よりも「やせ」の人のほうがリスクが高い「逆J字形」の関連がみられる。男女ともBMI21~27あたりがもっともリスクが低い。
  • BMIとがん死亡リスクの関連
     国内の7つのコホート研究を統合した結果によると、男性では肥満の人よりも、「やせ」の人のほうがリスクが高い「逆J字形」の関連がみられる。特にBMI21未満の人は、同23~24.9のグループに比べてがん死亡リスクが1.23倍に、さらにBMI19を下回ると1.44倍に上昇する。また、BMI30以上の肥満で、1.20倍のリスク上昇がみられるが、該当する人の割合が少ないこともあり統計学的には有意ではない。
     女性ではBMI30以上の肥満でのみリスクの上昇がみられ、同23~24.9のグループに比べて1.25倍になる。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

太りすぎず、やせすぎないようにする

 厚生労働省の「平成25年国民健康・栄養調査報告」によると、BMI30以上の肥満の人は、20歳以上男性の4.1%、20歳以上女性の3.4%です。一方、BMI18.5未満のやせの人は、20歳以上男性の4.7%、20歳以上女性12.3%となっており、やせすぎの人が特に女性で増えていることや、低栄養の高齢者が多いことが問題視されています。
 やせによる栄養失調は、免疫力を弱めて感染症を引き起こすほか、脳出血も引き起こすおそれがあります。また、中高年期(40~69歳)の男女約9万人を対象としたコホート研究では、男性でBMI19未満のグループは、23~24.9のグループよりも30%もがん全体の発生率が高くなっていました(JPHC Study「肥満度(BMI)とがん全体の発生率との関係について」)。
 糖尿病や高血圧などのない人は、無理にやせようとせず、中高年期男性はBMI21~27、中高年期女性は21~25を目標にしましょう。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。