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12条 正しいがん情報でがんを知ることから

12条 正しいがん情報でがんを知ることから

 世の中に氾濫するたくさんの情報に惑わされず、科学的根拠に基づくがん情報を得て、あなたに合ったがんの予防法を身につけることが大切です。間違った思い込み、情報の過信には、くれぐれも気をつけましょう。

生活習慣改善こそが予防の基本

 がんは、生活習慣や生活環境と密接に関係していることがわかっています。このコーナーで前回までにご紹介してきたがん予防法は、日本人を対象とした研究をもとに、科学的根拠にもとづいて提示したものです。
 とはいえ、がんはさまざまな要因が複雑に重なり合い、長い時間をかけて発生してくる病気です。そのため、「これをするとがんのリスクが一気に上がる」とか、「これさえ守れば絶対にがんにはならない」などということは、ほぼないに等しいといってよいでしょう。
 ですから、各項目で提示した目標値は、がん予防法を実践するうえでの手がかりとして、あくまでもひとつの目安とお考えください。
 また、現代はインターネットからも手軽に情報が収集できるため、世の中には多種多様な情報が氾濫しています。専門知識をもたない一般の方が、これらのなかから科学的根拠にもとづいた信頼できる情報を見極めるのは、容易なことではありません。そのため、その時々に耳にした報道などに、どうしても左右されてしまいがちです。よくありがちな「〇〇で予防する!」といった情報を鵜呑みにしてしまうと、その内容によっては、かえって健康面にマイナスの影響を与える危険もあります。
 これまで述べたとおり、禁煙、食事、運動といった生活習慣の改善が、がん予防の基本です。このごく当たり前とも思える生活習慣改善こそが、現段階では、個人としてもっとも実行する価値のあるがん予防法といえるのです。

がん予防法を実践するうえでの注意点

 ここでご紹介してきたがん予防法は、多くの方にとって有益な方法といえます。とはいえ、誤った解釈をしてしまうと、予防効果が期待できないだけでなく、かえって逆効果になることもあり得ます。以下の点に注意したうえで、実践するようにしましょう。

  • どんなに体によいものでもとり過ぎには注意
     ある食品や栄養素が体によいと聞くと、そればかりを集中的に摂取しようとする人がいます。しかし、どんなに有効な成分を含んでいるものであっても、たくさんとるほど効果も上がるとは限りません。ものによっては、過剰摂取により、弊害が起こる危険もあります。とくに、栄養補助剤(サプリメント)を服用する際は、注意が必要です。
  • 総合的なバランスを考えたうえで、生活習慣の改善を
     一部のがんや糖尿病の予防には、肥満の解消が有効であることがわかっています。一方で、やせ過ぎは別の部位のがんや感染症のリスクを上げることもわかっています。このように、同じがんであっても、対象となる部位により、予防法も変わってきます。一部の情報だけにとらわれて極端な取り組みをするのではなく、あくまでも総合的な健康に配慮したうえで、生活習慣を改善することが大切です。
  • 最適な予防法は常に「アップデート」が必要と心得て
     たとえば、乳がんや子宮がんといった女性特有のがんなどは、閉経の前後により発症のリスクが変わってくる場合があります。また、適正な体重も年齢によって異なります。
     このように、同じ人であっても、一生のなかでライフステージが移り変わっていくに従い、必要かつ最適な予防法も変化していきます。自身の体質や生活環境の変化などを時々見つめ直し、がん予防のための戦略も練り直すことを心がけましょう。

がんに関する情報全般については、国立がん研究センターの「がん情報サービス」を参照してください。

津金 昌一郎 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。