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胃がん予防には、まず減塩と禁煙を

胃がん予防には、まず減塩と禁煙を

数あるがんの中でも、日本人にもっとも顕著にみられる胃がん。その原因として、ヘリコバクターピロリ菌(以下、ピロリ菌)が最大の原因ですが、実は、日本人の伝統的な食生活も深く関わっているのです。まずは、食生活を見直し、特に塩蔵食品を控えて減塩に努めることが、胃がん予防の第一歩といえます。

新たな罹患者は全がんの中でもトップ

胃は、私たちが食べたものを一時的に貯蔵し、胃液などを分泌させ、その食物を消化する臓器です。

胃がんは、胃のもっとも内側にある粘膜の細胞が何らかの原因によってがん化し、増殖をくり返すことによって起こります。胃炎や胃潰瘍(かいよう)のような症状(胃の痛みや不快感、消化不良、食欲不振、吐き気、食習慣の変化など)が起こることがありますが、かなり進行しても無症状の場合もあります。がんはゆっくり大きくなるため、検診で見つかるころには、発生からすでに何年も経っているというケースが少なくありません。

胃がんは日本人に非常に多くみられるがんです。高齢化など年齢構成の変化を取り除いた場合、罹患率は低下傾向を示しているものの、新たに胃がんと診断される人の数は、すべてのがんの中でもトップ(国立がん研究センターがん情報サービス「地域がん登録全国推計によるがん罹患データ」の2011年全国推計値)。死亡者数も、肺がん、大腸がんに次ぐ多さとなっています(厚生労働省「2014年人口動態統計」)。

ピロリ菌感染、塩蔵食品のとりすぎ、喫煙が3大リスク

胃がん発生のリスク要因として指摘されているのが、ピロリ菌の持続感染、塩分のとりすぎ、喫煙の3つです。

胃がんは、日本や韓国では多く発生していますが、西欧諸国ではまれにしかみられません。また、同じ日本でも、塩蔵食品をとる習慣のある地域で多く発生しているのが特徴です。このことから、胃がんの発生と塩蔵食品摂取とは密接に関係していることがわかります。

塩分の高い食事は、胃粘膜を守っている粘液を破壊したり、性状を変化させます。これが、胃酸やピロリ菌の持続感染による慢性炎症をもたらし、胃がんになりやすい環境になると考えられています。

また、胃がんとピロリ菌との関係にも数多くのエビデンス(科学的根拠)があり、国際がん研究機関(IARC)は1994年に、「ピロリ菌の持続感染による慢性炎症が胃がんの原因である」と判定しています。40~69歳の日本人を対象として、私たちが1990年から調査を開始した多目的コホート研究*でも、ピロリ菌感染者の胃がん発生率は非感染者の約10倍という結果を示しています。

また、喫煙も胃がんのリスクを確実に高めることがわかっています。喫煙は、胃がんに限らず、多くのがんやがん以外のさまざまな病気のリスクを高めるということを、今一度、肝に銘じておきましょう。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。