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肝がんは、肝炎ウイルス検査を受け、禁煙・節酒で予防しよう

肝がんは、肝炎ウイルス検査を受け、禁煙・節酒で予防しよう

肝がんは、男女を合わせた死亡原因の第5位に入っているがんです。原因の大半を占めるのは肝炎ウイルスの持続感染であるため、肝炎ウイルス検査を受けることが予防への第一歩といえます。また、ほかのがんと同様に、喫煙や過剰飲酒は肝がんの確実なリスクとなり、肥満や糖尿病も発生リスクを高めます。一方、コーヒーの飲用によりリスクが下がることが期待されます。

原因の9割は肝炎ウイルスの持続感染

最新の2012年の集計によると、部位別に罹患数を見た場合、肝がんは男性の5位に入っています(国立がん研究センター「全国がん罹患モニタリング集計2012年罹患数・率報告書」より)。また、2014年の死亡数では、男性は4位に入っており、男女を合わせた場合も5位に入っています。肝がんは、罹患率・死亡率ともに男性のほうが高く、女性の約2~3倍となっています。

肝臓は、人間の体の中でも最大の臓器で、成人で800~1,200gもあります。その主な働きは、①食事でとりいれた栄養分を体にとって使いやすい物質に変える、②有害物質を解毒・排出する、③胆汁をつくって腸での脂肪の消化吸収を助ける、の3つです。

肝臓というとアルコールを分解するイメージが強く、「肝がんの原因=アルコール」だと信じ込んでいる人が少なくないのですが、これは正しくありません。肝がんの最大のリスク要因は、肝炎ウイルスの持続感染です。

日本人の肝がんの約70%はC型肝炎ウイルス、約20%はB型肝炎ウイルスの持続感染によるものです。B型・C型肝炎ウイルスは、主に血液(出産時の母子感染、輸血や血液製剤の使用、感染リスクが明らかでなかった時代の医療行為など)を介して感染します。また、B型肝炎ウイルスは、性的接触でも感染します。

肝炎ウイルスに感染すると、B型肝炎では約10%、C型肝炎では約70%の割合で慢性肝炎に進行します。慢性肝炎になると、長期にわたって炎症と再生が繰り返されるうちに、肝臓の線維化が進みます。その結果、肝硬変や肝がんになりやすくなるのです。

また、近年は、飲酒習慣のない人の脂肪肝から進行する「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」が増えています。そのまま放置すると、肝硬変や肝がんにまで進む可能性もあります。

喫煙、過剰飲酒は確実なリスク。肥満、糖尿病にも注意が必要

肝炎ウイルス以外の主なリスク要因としては、喫煙、過剰飲酒、肥満、糖尿病が挙げられます。喫煙、過剰飲酒は、ほかのがん同様、肝がんの場合も確実なリスク要因となります。

肥満も肝がんの発生リスクを上げることがほぼ確実とされています。また、日本の8つのコホート研究*1約33万人を対象としたプール解析*2によると、糖尿病既往症のある人は、ない人に比べて、男性は2.25倍、女性は1.84倍肝がんにかかるリスクが高くなっていました(JPHC Study「糖尿病とがん発生リスク」参照)。糖尿病により肝がんリスクが2倍程度高くなることは間違いないものと思われます。

*1 コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの
*2 プール解析…複数の研究データを、あらかじめ定めた共通のルールにのっとって解析するもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。