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前立腺がんは、確立された予防法はないが、経過が良好なことが多い

前立腺がんは、確立された予防法はないが、経過が良好なことが多い

前立腺がんは、65歳以上の男性に多くみられます。PSA検査の普及により増加傾向にありますが、悪性度の高いものは少なく、比較的治りやすいがんです。高齢者や家族歴のある人はリスクが高くなりますが、PSA検査を受けるかどうかについては、慎重に判断することがすすめられます。

65歳以上で増加するが、5年生存率は高い

前立腺は、男性特有の生殖器官です。膀胱(ぼうこう)のすぐ下にあり、尿道を取り巻くように存在していて、精液の一部となる前立腺液を分泌しています。

前立腺がんは、前立腺の細胞が無秩序に自己増殖することによって発生します。65歳以上に多くみられ、高齢になるほど増加します。早期には特徴的な症状がないため見過ごされがちですが、PSA(前立腺特異抗原)検査によって早期がんが発見されるようになったことなどの影響で、近年、罹患率が増加しています。

前立腺がんの発生率には人種差があり、日本人は比較的かかりにくいがんです。国立がん研究センターがん対策情報センターの「最新がん統計」によると、日本人男性が生涯に前立腺がんにかかる可能性(生涯累積罹患リスク)は9%ですが、死亡確率(生涯累積死亡リスク)は1%です。また、2006~2008年に診断された前立腺がんの5年生存率は97.5%となっており、治りやすいがんだといえます。

高齢、人種、家族歴がリスク要因

前立腺がんの確立したリスク要因は、年齢(高齢者)、人種(黒色人種)、家族歴とされています。人種に関しては、米国黒色人種がもっともリスクが高く、続いて白色人種が高いとされています。また、おそらく肥満が進行性の前立腺がんのリスクになるとされています。

現時点では、予防要因として確立しているものもありませんが、食事からのカルシウムや乳製品などにおいて、限定的なエビデンス(科学的根拠)が示されています。わが国の多目的コホート研究*やアジアで行われたコホート研究において、「大豆製品や大豆製品に含まれるイソフラボンの摂取が多いグループは前立腺がんのリスクが低くなる」という比較的一致したエビデンスがあります。しかしながら、どの時期にどれくらいとればよいのかということや、進行性の前立腺がんのリスクを上げる懸念などが示されており、現時点では、関連ははっきりわかっていません。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。