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たくさんある「がんが予防できる」という情報、どう見極めればいいの?

たくさんある「がんが予防できる」という情報、どう見極めればいいの?

数あるがん予防法のなかから、本当に信頼できるものを見極めるのは、容易なことではありません。まずは、現在明らかになっている「日本人のためのがん予防法」を基本とし、信頼性の高い疫学研究を参考にしましょう。

まずは情報の質をしっかりと見極める

近年の統計からは、日本人の2人に1人ががんにかかり、男性では6人に1人、女性では4人に1人が、がんによって亡くなると推計されています。それほど身近な病気であるだけに、「がんが予防できる」という情報に敏感に反応してしまうのは無理もありません。

これまでの研究により、がんは生活習慣と深くかかわっていることが明らかになっています。ただし、忘れてはいけないのは、万人に当てはまる絶対的な予防法などはほぼ皆無に等しいということ。また、世の中にはさまざまな情報があふれていますが、それらの信憑性には雲泥の差がある、ということです。

例えば、健康食品などの広告にありがちな誰かの経験談は、具体例としてわかりやすく、つい信じてしまいがちです。しかし、その人の生活習慣の詳細まではわかりませんし、健康を手に入れた要因が本当にその健康食品によるものなのかは定かではありません。つまり、この類のものは、実際にはまったく科学的根拠のないものです。本当に有益な予防法を見つけるためには、まずは情報の質をしっかりと見極める必要があります。

研究の種類により信頼性の高さは異なる

「○○を食べるとがんのリスクが低下する」といった情報の裏づけとして、さまざまな研究発表が引用されることがあります。そうした研究にはいくつかの種類があり、それをまとめたのが以下の表です。

●人におけるがんリスクを評価するための根拠の種類

ヒトを対象とした疫学研究
  無作為(ランダム)化比較試験
例:乳がん患者の血縁者などのハイリスク・グループに対し、タモキシフェン投与グループとプラセボ(偽薬)投与グループの間で、乳がんリスクを比較する研究
  コホート研究
例:ある地域住民の特定の年齢層に対する食事調査を行い、食塩摂取量の多いグループと少ないグループの間で、調査後10年間の胃がんリスクを比較する研究
  患者対照研究
例:胃がん患者グループと、年齢や性別などを同じ条件にそろえた胃がんでない人のグループの間で、過去の食塩摂取量を調査し、食事内容による胃がんリスクを比較する研究
実験室での研究
  動物実験
例:マウスをいくつかのグループに分けて、さまざまな濃度の発がん物質や抑制物質を投与して、がんの発生率を比較する研究。
  試験管内実験
例:培養細胞に発がん物質や抑制物質を投与して、遺伝子の変化などを観察する研究。
経験談、権威者の意見
例:データの裏づけのない、主観に基づく意見
出典:国立がん研究センターがん情報サービス

 

これらのうち、上位に記述されている研究からの情報ほど、信頼性は高いと考えられます。しかし、どんなに信頼性の高い研究であっても、偶然や偏り、別の要因などの影響を受けている可能性はあります。ある生活習慣とがんとの因果関係の有無を判定するには、複数の研究結果をもとに、偶然性や偏り、別の要因による影響などを排除し、そのメカニズムが説明できるかなども含め、総合的に判断する必要があるのです。

また、欧米の研究だけに基づく情報は、日本人にそのままあてはまるとは限りません。欧米人と日本人とでは、かかりやすいがんの種類や生活習慣・肥満の割合などが違うため、それらを踏まえ、日本人ではどうなのかを解釈しなければなりません。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。