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日本人男性のがんの半分が「予防可能な原因による」ってどういうこと?

日本人男性のがんの半分が「予防可能な原因による」ってどういうこと?

日本人のがんのうち、男性では約55%、女性では約30%が、生活習慣や環境など予防可能な原因によるものである、という調査結果があります。なかでも圧倒的に大きいリスク要因は「喫煙」と「感染」です。喫煙者は禁煙し、非喫煙者は受動喫煙を避けること。加えて、がんの発生に関連するウイルスや菌の感染を予防したり、検査を受けて早期発見に努めたりすることで、多くのがんを防ぐことができるといえます。

日本人のがんは「喫煙」と「感染」が最大のリスク要因

われわれの国立がん研究センターでは、2011年に、日本人のがんの原因を推定する調査を行いました。これは、特定のリスク要因への曝露がなかった(またはそれに準じる状態であった)と仮定した場合、がんの発生(またはがんによる死亡)が何パーセント減少することになったかを数値化して、寄与割合を推計したものです(国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループ「日本におけるがんの原因」)。

これによると、男性のがんの約55%(がん発生は53%、がん死は57%)は予防可能なリスク要因によるものであることがわかりました。一方、女性では30%近く(がん発生は28%、がん死は30%)が予防可能な要因によるものでした。

男女総合でみてみると、喫煙と感染がそれぞれ20%前後ともっとも多く、次いで多いのが飲酒(6%強)でした。つまり、日本におけるがんでは、喫煙と感染が圧倒的に大きいリスク要因であることが明らかになりました。

ちなみに、男女別の第1位のリスクは、男性は喫煙、女性は感染となっています。これは主に、女性よりも男性のほうが喫煙率が高いことによります。

喫煙率を減らし、受動喫煙のない社会づくりを目指す

今年(2017年)4月、厚生労働省は今年度から6年間の「第3期がん対策推進基本計画」の素案を、がん対策推進協議会に示しました。この素案では、「がん予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」の3つを対策の柱として設定。予防では、がんのリスクへの曝露を減らす1次予防に重点を置き、さらに早期発見(2次予防)、早期治療の促進により、がんの罹患者や死亡者の減少を目指します。

1次予防のなかでもとくに重要視されているのが、たばこ対策です。成人の喫煙率は減少傾向にはあるものの、2015年の調査では18.2%(「国民健康・栄養調査」による)と依然高い水準であり、さらなる取り組みが必要といえます。また、受動喫煙が原因で死亡する人が日本国内で1万5千人を超えると推計されており、2022年度までに、受動喫煙を有する者の割合を、行政機関では0%に、また、家庭では3%、飲食店では15%とすることを目標としています。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。