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親族にがんの患者がいれば、同じがんになりやすい?

親族にがんの患者がいれば、同じがんになりやすい?

「うちはがん家系だから…」という人がいますが、実は遺伝性のがんは全体の約5%にすぎません。それよりも、喫煙や食事といった生活習慣の影響のほうがずっと大きいのです。とはいえ、遺伝性のがんも存在するので、もし遺伝性のがんが疑われる場合は、専門のカウンセリングを受けることをおすすめします。

遺伝的要因が確実なのは、大腸がん、乳がん、前立腺がんの3つ

家族や血縁者のなかに同じがんにかかった人がたくさんいる場合、家族性がん(家族性腫瘍)と呼ばれることがあります。これは、遺伝が原因であることが明らかな遺伝性がん(遺伝性腫瘍)の場合もあれば、遺伝とは別に、がんにかかりやすい生活環境を共有したことが原因の場合もあります。

遺伝的要因が明らかになっているがんとしては、大腸がん、乳がん、前立腺がんの3つが挙げられます。これは、4万5000組の双子を一卵性(遺伝子は100%一致)と二卵性(同平均50%)の2つのグループに分け、同じ部位のがんにかかる確率を調べた北欧の研究によって、遺伝的要因が統計学的に有意と認められています。とはいえ、双子の1人がこれらのがんになった場合、もう1人が75歳までに同じがんにかかる確率は、二卵性の場合は3~9%、一卵性の場合であっても11~18%に過ぎませんでした。

比較的遺伝しやすいがんであっても、同じがんにかかる確率は低いといえます。

遺伝性がん、家族性がんとは

私たちの体の細胞の中には、がんの発生を抑えるがん抑制遺伝子というものが存在しています。がん抑制遺伝子は、1つの細胞の中に2個ずつ入っていて、1個は父親由来、もう1個は母親由来のものになります。遺伝性のがんの多くは、このがん抑制遺伝子に生まれつき異常(変異という)があり、それが原因で発症します。

一般的な人の場合、何らかの原因で片方のがん抑制遺伝子が壊れてしまっても、もう1つがきちんと機能していれば、その細胞はがんにはなりません。しかし、もう1つのがん抑制遺伝子も壊れてしまうと、がんの発生を抑えられなくなり、細胞ががん化してしまいます。

一方、遺伝性がんの患者さんの場合、生まれつき片方のがん抑制遺伝子に異変があります。つまり、正常ながん抑制遺伝子をもともと1つしか持っていないため、一般の人よりもがんになりやすいのです。

しかし、たとえ親ががんだからといって、必ずしも変異があるがん抑制遺伝子を受け継ぐとは限りませんし、たとえ受け継いだとしても、がんを発症しないケースもあります。また、変異があるがん抑制遺伝子を受け継いでいなくても、がんになる場合もあります。つまり、がんの遺伝を受け継いでいるかどうかは、家族にがんがある・ないだけで単純に判断することはできないのです。

遺伝のことをまったく無視することはできませんが、それ以上に生活習慣の改善が重要であるということを、肝に銘じておきましょう。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。