文字サイズ

ストレスによって、がんになることはある?

ストレスによって、がんになることはある?

ストレスや疲労は、心身に悪影響を及ぼし、生活習慣の乱れにつながったり、それによって生活習慣病を引き起こしたりします。ストレスが直接の原因となってがんが発生するかどうかは明らかになっていませんが、ストレスへの対処方法の違いや、支えてくれる人の存在は、がんの発生や生存率に影響する可能性があることがわかっています。

日々の問題に対し「プラス面を見つけ出す努力をする」人は、がんリスクが低い

心身のストレスや疲労が、がんの発生に直接かかわるかどうかは、現在のところ明らかになっていません。しかし、日々のストレスにどのように対処するかどうかによって、がんにかかるリスク(がん罹患リスク)とがんで亡くなるリスク(がん死亡リスク)に差が出ることを示すデータがあります。

日常的に経験する問題や、出来事への対処方法は、人によっていくつかのパターンに分かれます。国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)では、問題や出来事に対する対処パターンと、がん罹患リスクとがん死亡リスクの関連を調べました(JPHC Study「日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方とがん罹患及び死亡との関連について」)。

この研究は、平成12(2000)年と平成15~16(2003~04)年に、日本各地(分散された特定の地域)の50歳から79歳の男女約11万人を対象として行ったものです。調査開始時のアンケートで、日常経験する問題や出来事に対してどのように対処しているか、次の6つの行動パターンの頻度を質問しました。

対処型行動 「解決する計画を立て、実行する」
「誰かに相談する」
「状況のプラス面を見つけ出す努力をする」
逃避型行動 「変えることができたらと空想したり願う」
「自分を責め、非難する」
「そのことを避けてほかのことをする」

平成23(2011)年までの追跡調査中に、約5,000人にがんが発生し、約1,600人のがん死亡が確認されました。対処型行動と逃避型行動のそれぞれについて、頻度が高い群と低い群に分け、頻度の低い群に比べて高い群でがん罹患及びがん死亡リスクがどうなるかを調べたところ、次のような結果となりました。

  • 対処型行動をとる人では、がん死亡のリスクが低く、特に「状況のプラス面を見つけ出す努力をする」人でがん死亡のリスクが低い
  • 対処型行動をとる人では、全がん罹患で明らかな関連はみられないものの、限局性がん(早期のがん)で発見されることや、検診で発見されることが多い

日常的に対処型の行動をとる人は、がん予防やがん治療に対しても問題意識をもち、計画を立てて実行するため、検診受診や医療機関受診、積極的な情報収集などを行う可能性が高く、早期発見・早期診断に結びついていると考えられます。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。