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糖尿病の人はがんになりやすい?

糖尿病の人はがんになりやすい?

もはや日本人の国民病とも言われる糖尿病。その診断基準に使われる検査値がHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)ですが、近年の研究により、糖尿病の有無にかかわらず、HbA1c値が高いと多くのがんのリスクが上昇することがわかりました。糖尿病予備群の人だけでなく、HbA1c値が上昇傾向にある人も油断は禁物。がんを予防するためにも、糖尿病を防ぐことが重要です。

糖尿病ではなくても、HbA1c値が高いとがんリスクが上昇

国立がん研究センターが行ってきた多目的コホート研究(JPHC研究)*により、糖尿病と診断されたグループでは、大腸がん、すい臓がん、肝臓がん、子宮体がんなどのがんにかかるリスク(がん罹患リスク)が1.5~4倍高く、がん全体でも約1.2倍高いと報告されています。

糖尿病は、慢性的に血糖値が高くなるのが特徴です。その糖尿病の診断基準の1つとなっているのが、HbA1cです。HbA1cとは、過去1~2カ月の血糖値の平均を反映する検査値です。糖尿病ががんのリスク因子であるならば、HbA1cもがんリスクと関連することが予想されます。

そこで、HbA1cとがんリスクとの関連を調べる研究が実施されました。この研究は、岩手、長野、沖縄など9つの保健所で、糖尿病調査(1998~2000年度および2003~2005年度に実施)に参加した男女約3万人を対象として行ったものです。

糖尿病調査で測定したHbA1cの値により、「5.0%未満」「5.0~5.4%」「5.5~5.9%」「6.0~6.4%」「6.5%以上」「既知の糖尿病」の6つのグループに分け、その後、すべてのがん、および臓器別のがんにかかる(罹患)リスクをそれぞれ分析しました。

追跡期間中にがんに罹患したのは、1,955人でした。HbA1c値「5.0~5.4%」を基準にがんの罹患リスクをみてみると、「5.0%未満」で1.27倍、「5.5~5.9%」で1.01倍、「6.0~6.4%」で1.28倍、「6.5%以上」で1.43倍、「既知の糖尿病」で1.23倍でした。糖尿病にかかっている・かかっていないにかかわらず、HbA1c値が高いグループで全がんリスクが上昇していました。また、HbA1c値が低いグループ(5%未満)でもリスク上昇がみられました。

がん種別にみてみると、HbA1c値が高いグループで大腸がん(特に結腸がん)のリスクが上昇しており、肝臓がんやすい臓がんではHbA1c値が低いグループ(5%未満)でもリスクの上昇がみられました。また、肝臓がんを除くと、HbA1c値が高くなるほどがんリスクも上昇していました。

ちなみに、肝臓がんではHbA1c値が低いグループでもリスクの上昇がみられたのは、肝硬変などでは、実際の血糖値よりもHbA1cが低い値を示すことが多いためと考えられます。肝硬変は肝臓がんの前段階とされる状態であるため、HbA1c値が低いグループで肝臓がんリスクが上昇していた可能性があると考えられます。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。