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太りすぎでも、やせすぎでもがんになりやすい?

太りすぎでも、やせすぎでもがんになりやすい?

肥満はがんを含む多くの病気の原因となることが知られていますが、実はやせすぎもがんのリスクを高めます。特に中年期以降、5kg以上の増加や減少は要注意。5kg以上減少した人では、がん死亡のリスクは男女ともに1.5倍も上昇するという研究報告もあります。太りすぎだけでなくやせすぎにも注意し、適正体重を維持することが大切です。

特に若い女性でやせすぎの人が増えている

肥満度の指標となるのが、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」によって算出されるBMIです。日本では、BMI25以上の「肥満者」の割合は、男性29.5%、女性19.2%となっており、この10年間でみると男性は横ばい、女性は減少傾向にあります。一方、BMIが18.5未満の「やせ」の人の割合は、男性4.2%、女性11.1%でいずれも横ばいです。また、20歳代の女性のやせの人の割合は22.3%、65歳以上の低栄養傾向(BMI20以下)の高齢者の割合は16.7%で、やせすぎの若い女性が増えていることや、低栄養の高齢者が多いことが問題視されています(厚生労働省「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」による)。

体重の大幅な増減、やせすぎ・太りすぎでがんリスクが上昇

日本各地(分散された特定の地域)の40~69歳の男女約8万人を対象に、5年間の体重変化と、その後の総死亡、がん死亡、循環器疾患死亡との関連を調べた多目的コホート研究があります。5年間の体重の変化によって5つのグループに分け、その後の死因別死亡リスクを調べました。

その結果、体重の変化が2.4kg以内だったグループと比べて、5㎏以上減少もしくは5kg以上増加したグループで、男女ともに総死亡のリスクが1.3~1.7倍に上昇していました。なかでも、死亡のリスクが最も高かったのは、体重が5㎏以上減少したグループでした。また、がん死亡のリスクは、5㎏以上減少したグループで男女ともに1.5倍上昇、循環器疾患死亡のリスクは、5㎏以上増加した女性のグループで1.9倍に上昇していました。

体重が大幅に減少、もしくは増加したグループほど総死亡のリスクが高まるという傾向は、調査開始時のBMI、喫煙習慣、年齢にかかわらず認められました。

また、BMIによって7つのグループに分け、その後のがん全体の発生率を比較した研究もあります。その結果、男性ではBMIが21未満のやせているグループと30以上の非常に太っているグループで、がんの発生率が高くなっていました。特に、BMIが19未満のもっともやせているグループでは、BMIが23~24.9のグループと比べてがんの発生率が約30%も高くなっていました。一方、女性では、BMIによるがん全体の発生率に大きな違いはみられませんでした。

BMIとがんの死亡率の関係でも、やせているグループと太っているグループでがんの死亡率が増加する傾向にあり、がんの発生率との関係以上に、やせによる死亡率の増加が顕著にみられました。これらのことから、非常にやせている人はがんになりやすいと同時に、がんになった後の回復力も弱く死に至りやすいのではないかと考えられます。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。