文字サイズ

がん発生1.2倍─糖尿病の罹患歴がある人の、ない人に比べたリスク

がん発生1.2倍─糖尿病の罹患歴がある人の、ない人に比べたリスク

糖尿病もがんも、喫煙や肥満、運動不足といった生活習慣が大きなリスク要因となります。国立がん研究センターが行った解析では、糖尿病の罹患歴がある人は、ない人に比べてがんになるリスクが1.2倍になることが示されました。糖尿病とがん、いずれの予防においても、生活習慣の改善が大事なポイントとなります。

全がんで1.2倍。結腸がん、肝臓がん、すい臓がんでも上昇

これまでも、数々の研究結果から糖尿病とがん発生の関連は示唆されていましたが、結果が必ずしも一致していなかったり、糖尿病自体ががんの要因になっているのかなどわかっていません。また、糖尿病の主な発生要因である肥満や運動不足、偏った食事、喫煙などは、がんの発生要因と共通しているため、見かけ上リスクが上昇しているだけである可能性が否定できません。

そこで、国立がん研究センターでは糖尿病とがん発生リスクの関連を少しでもはっきりさせるために、プール解析を実施しました(国立がん研究センター 社会と健康研究センター「糖尿病とがん発生リスク」)。これは、8つのコホート研究、計33万人以上のデータを集めて再解析することにより、糖尿病の発症(罹患歴)ががん発生のリスクに与える影響を推計したものです。

糖尿病の罹患歴がない場合を基準に、罹患歴がある場合のがん発生リスクを推計したところ、全がんの発生リスクが1.19倍となりました。部位別にみると、結腸がんは1.40倍、肝臓がんは1.97倍、すい臓がんは1.85倍、明らかなリスクの上昇が見られました。これに加え、男性では胆管がんが1.66倍となりました。

* コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。