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がんを防ぎ、健康的に過ごすための1日の飲酒量

がんを防ぎ、健康的に過ごすための1日の飲酒量

古くから「酒は百薬の長」といわれるとおり、適度な飲酒は一部の病気を予防するとされています。しかし、適量を超えれば、各種がんをはじめ、様々な病気のリスクを上げることは確実です。健康を維持しながらお酒を楽しめる「適量」を知り、節度ある飲酒を心がけましょう。

お酒は飲む量によってリスクが逆転

数々の研究により、過剰な飲酒が各種がんのリスクを上げることは明らかになっています。一方で、適量の飲酒は循環器疾患などを予防するという報告もあります。そこで、国立がん研究センターでは、日本の6つのコホート研究*1のデータを統合したプール解析*2を行い、飲酒量別に全死亡、死因別(全がん、心疾患、脳血管疾患)死亡との関連を推定しました。

ふだんのアルコール摂取状況によって男女をそれぞれグループ分けし、まったく飲まないグループを基準に、他のグループの死亡リスクを推計しました。その結果、男性では飲酒量が増えるにつれていったん死亡リスクが下がるものの、一定量以上に飲酒量が増えるとリスクが上がるというJ字型、あるいはU字型の関連がみられました。まったく飲まない人よりも死亡リスクが高くなった1日あたりの飲酒量をエタノール換算でみてみると、全死亡と心疾患死亡では69g、がん死亡と脳血管疾患死亡では46gとなっていました。

一方、女性では全死亡と心疾患死亡で男性と同様の関連がみられ、エタノール換算で23g以上の飲酒で死亡リスクが高くなっていました。

*1 コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

*2 プール解析…複数の研究データを、あらかじめ定めた共通のルールにのっとって解析するもの

飲酒でがんリスクが上昇する理由

ではなぜ、飲酒によってがんのリスクが高まるのでしょうか。飲酒によって体内に取り込まれたエタノールは、肝臓でアセトアルデヒドに代謝されますが、このアセトアルデヒドは人体に対して発がん作用があることがわかっています。

また、エタノールは、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの血中濃度を上昇させるという報告があります。エストロゲンは、乳がんの主要なリスク要因であるため、乳がんの発生リスクを高めることにつながります。そのほか、飲酒は免疫機能を抑制したり、食事の偏りから栄養不足につながったりすることなども、がんの原因になると考えられています。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。