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胃がん48%減、大腸がん70%減─各がん検診受診による死亡率減少

胃がん48%減、大腸がん70%減─各がん検診受診による死亡率減少

日本人が罹患しやすい胃がん、大腸がんは、検診受診によって早期発見、早期治療につなげれば、それらのがんによる死亡リスクを減らせることがわかっています。いずれもデメリットが比較的少なく受けやすい検査なので、一定の年齢に達したら、定期的に検診を受けるようにしましょう。

対象のがんによる死亡率が低下

がん検診は、そのがんによる死亡率を低下させることを目的とした検査です。国立がん研究センターでは、約4万人の男女を対象としたコホート研究を行い、「胃がん検診受診と胃がん死亡率との関係」および「大腸がん検診受診と大腸がん死亡率の関係」について、それぞれ調査しました。

胃がんについては、過去1年間に検診受診なしの人と比べて、検診受診ありの人では胃がんによる死亡率が約48%低下していました。さらに、胃がん以外のがんの死亡率は約21%、全死因死亡率は約29%低下していました。

一方、大腸がんについては、過去1年間に検診受診なしの人と比べて、検診受診ありの人では大腸がんによる死亡率が約70%低下していました。さらに、大腸がん以外のがんの死亡率は約18%、全死因死亡率は約30%低下していました。また、大腸がんを発見した時点での進行度でみてみると、検診受診なしの人と比べて、検診受診ありの人では大腸がんが早期で発見される可能性が約3割高くなり、逆に進行してから発見される危険性は約6割減少していました。

それぞれ、胃がんあるいは大腸がんだけでなく、死亡率全体が低下したのは、検診を受診するような人は健康意識が高く、健康的な生活習慣を持つ人が多いためではないかと考えられます。しかし、それぞれ胃がんあるいは大腸がんによる死亡率低下の度合いが、それ以外による死亡率低下の度合いよりも胃がん検診では約20~30%、大腸がん検診では約40~50%も大きくなっていることから、胃がん、大腸がん検診自体の有効性がうかがえます。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

がん検診にはメリットもデメリットもある

症状が出る前の早期にがんを発見し、早期治療につなげられ、その結果としてがんによるQOL(生活の質)の低下や死亡を減らせるのが、がん検診の最大のメリットです。特に、大腸がん検診ではがんになる前の「前がん病変」の状態で発見される場合があり、大腸がんの発生を予防できることも明らかになっています。

一方で、がん検診にはデメリットも伴います。例えば、検査や精密検査による心身や経済的・時間的負担、検査で陽性であったのに実際にはがんがない「偽陽性(ぎようせい)」、その反対にがんがあるのに見逃される「偽陰性(ぎいんせい)」は、全てのがん検診に必ず存在し得るデメリットです。そして、増殖が遅いなどで、検査をしなければ寿命までに症状が出たり命をおびやかしたりすることのないがんを診断し治療してしまう、過剰診断の可能性があることもわかってきました。特に、余命が短くなる高齢者において、そのようなことが起こりやすくなります。ただし、胃がんや大腸がんの場合は、近年の治療法の進歩により、内視鏡治療により身体への負担が少なくがんを切除できるため、たとえ過剰診断でも侵襲は小さい(体にやさしい)という側面があります。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。