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授乳と乳がん─リスク低下の“可能性あり”

授乳と乳がん─リスク低下の“可能性あり”

国立がん研究センターの「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」研究班の行った、日本の疫学研究に基づく関連性の評価では、日本人において、母乳を含む授乳が乳がんリスクを低下させる可能性があると結論づけられています。母乳の出にくい女性が無理に努力する必要はありませんが、母体と子ども双方への好影響があることから、推奨されます。

いくつかの研究で乳がんリスク低下を示唆

国際的な研究において、授乳(母乳を含む授乳スタイル。人工乳のみの場合は除く。以下同)が乳がんのリスクを下げることは「ほぼ確実」と評価されていますが、これらの研究の多くは欧米の集団を対象に行われたものであるため、日本人にそのまま当てはめることができませんでした。

そこで、国立がん研究センターの「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」研究班では、日本人女性を対象とした疫学研究をもとに、授乳と乳がんリスクとの関連について評価を行いました。

具体的には、1980年から2011年までの間に発表された疫学研究の中から、3件のコホート研究と5件の症例対照研究を対象に評価を行った結果、いくつかの研究において授乳による乳がんのリスク低下が示唆されました。一部の研究では統計的に有意な結果は得られませんでしたが、これらを総合的に分析した結果、日本人において、授乳が乳がんリスクを低下させる「可能性あり」と評価しました。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。