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冷たいものがしみたら知覚過敏かも

冷たいものがしみたら知覚過敏かも

う蝕(虫歯)がないのに、歯を磨くときや冷たいものを口に入れたときなどに、時には風が当たるだけで痛みや歯にしみる感じがある状態を「知覚過敏」といいます。放っておくと痛みが強くなり、歯の神経を抜かなくてはならない場合や歯周病が進行している場合もあるので、軽症のうちに歯科の受診を。

エナメル質の下の象牙質が露出して神経が刺激される

う蝕(虫歯)がなく普段はなんともないのに、歯を磨いたときや冷たいものを口にしたときに、ビリビリッとした痛みを感じたことはありませんか? それは知覚過敏かもしれません。

歯の表面は硬いエナメル質で覆われ、その下には象牙質の層があります。さらにその中心に歯髄があり、中に神経や血管が通っています。象牙質の層には、象牙細管という非常に細い管状の構造がたくさんあり、そこを通して外部の刺激が歯の中心にある神経に伝わります。
知覚過敏が起こるのは、なんらかの理由で表面に露出した象牙質から刺激が神経に伝わるためです。歯磨き用のブラシの感触や飲食物の冷たさなど、神経に届く刺激は全て痛みとして感じられるため、思いがけぬ痛みにビクッとすくむことになります。

外部の刺激から歯の内側を守っているエナメル質ですが、歯ぎしり(ブラキシズム)、噛み合わせの異常や不適切なブラッシングでエナメル質と歯根の境界部分(セメントエナメル境)が削られたり、食品に含まれる酸によって溶かされたりして失われ、その下の象牙質が露出してしまうことがあります。
また、健康な状態では歯肉(歯ぐき)に覆われている歯の根の部分(歯根)は、エナメル質ではなくセメント質で覆われています。しかし、セメント質は薄く(20~100μm)、エナメル質ほど硬くありません。したがって、加齢や歯周病の進行などで歯肉(歯ぐき)が下がって歯の根元が露出してくると、そこを覆うセメント質が傷ついたり削られたりして象牙質がむき出しになるため、知覚過敏が起こりやすくなります。しかも、セメント質は、エナメル質と歯根の境界部分(セメントエナメル境)付近の厚さが、20μm程度で最も薄い構造になっていることからも知覚過敏がより起こりやすいことになります。

知覚過敏の治療法は、噛み合わせの調整(咬合調整)や薬の塗布やコーティング

知覚過敏による痛みを避けようとして、きちんと歯ブラシを当てて歯を磨かなくなってしまうと、歯垢(プラーク)が除去されずにたまり、知覚過敏の症状が強くなり、う蝕(虫歯)や歯周病の悪化を招いてしまいます。症状が軽いうちに治療を開始して、症状の進行を防ぎましょう。また、歯ぎしり(ブラキシズム)や噛み合わせを確認し、異常所見があれば、噛み合わせの調整処置(咬合調整)を受けましょう。

症状が軽い場合は、正しいブラッシングで歯の清潔を保ち、唾液による歯の再石灰化を促すことで治る場合があります。しかし、改善しない場合は、露出した象牙質の表面にフッ化物が配合された薬などを塗布して、その結晶で象牙細管内を封鎖したり、表面をコーティングして管の入口を塞ぎ、神経に刺激が伝わらないようにします。象牙質の表面の損傷が大きければ、レジンなどの修復物で傷を埋めるようにして表面を覆います。

知覚過敏が悪化すると、神経が炎症を起こしてしまい神経の除去(抜随)が必要になる恐れもあります。また、痛みの原因が知覚過敏ではなく、歯に入った見えないくらい細い亀裂のためだったり、以前治療した歯の補綴物の奥でう蝕(虫歯)が進んでいたためだったりする可能性もあります。自己判断で放置せずに、早めに歯科を受診して適切な治療を受けてください。

稲垣 幸司 先生

監修者 稲垣 幸司 先生 (愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授 同大学歯学部歯周病学講座兼担准教授)
愛知学院大学歯学部卒業 同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。同大歯学部(歯周病学講座)講師などを経て、ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座客員研究員。愛知学院大学歯学部助教授、2007年より現職。日本歯周病学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本歯科保存学会専門医、子どもをタバコから守る会・愛知世話人代表、禁煙心理学研究会世話人、日本小児禁煙研究会理事。アメリカ歯周病学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会、日本禁煙学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科衛生学会など国内外の所属学会多数。歯周病と全身疾患、特に骨粗鬆症や糖尿病との関係や脱タバコ教育、禁煙支援に関する研究などを行う。