文字サイズ

片側ばかりで噛む「偏咀嚼」を軽く見ていませんか?

片側ばかりで噛む「偏咀嚼」を軽く見ていませんか?

食事のときに片側でばかり噛むことを「偏咀嚼(へんそしゃく)」といい、顎(あご)のゆがみの原因となります。顎のゆがみは歯並びの乱れや、顔や体のゆがみを招き、頭痛や肩こりなどの不調を招くことがあります。食事の際は、左右均等に噛むことを心がけましょう。

全身のゆがみにつながり、頭痛や肩こりなどを引き起こすことがある

食事のとき、無意識のうちにいつも同じ側でばかり噛んでいませんか? また、知らないうちに、どこかに痛い歯があったり、歯並びの関係で、同じ側でしか噛めない状況になっていませんか?
いつも同じ側でばかり噛むことを、「偏咀嚼(へんそしゃく)」「片側咀嚼」「片側噛み」などといい、口腔悪習癖の1つになります。偏咀嚼を続けていると、噛んでいる側の顎や、顎を動かす咀嚼筋が緊張する一方で、反対側の咀嚼筋がゆるんで、顎がずれる(下顎の偏位)原因になります。
顎のゆがみは、歯並びや顔全体のバランスの乱れにもつながります。眉の高さや目の大きさ、笑ったときの口角の位置などが左右で大きく異なるという人は、もしかしたら偏咀嚼によって顎がゆがんでいるのかもしれません。
また咀嚼筋の緊張は、顎が「カクカク」「ジャリジャリ」と鳴ったり、痛んだりする顎関節症(がくかんせつしょう)の一因と考えられています。

さらに、偏咀嚼の影響は顎や顔だけにとどまらず、やがて全身にも及びます。
例えば、いつも右側でばかり噛んでいると、右の顎関節や咀嚼筋に負担がかかることで、連動している首の右側の筋肉も緊張し、首が右側に傾いてしまいます。肩や腰、下半身など全身のゆがみも強くなり、頭痛、肩こり、疲れ目、めまい、耳鳴り、腰痛、手足のしびれなどの異常を引き起こすといわれています。

左右均等に噛むことを意識して

う蝕(虫歯)や歯周病、歯並びの乱れ、欠けた歯や抜けたままの歯などがあると、痛みや噛みにくさから、その部分を避けようとして偏咀嚼になりがちです。偏咀嚼を改善するためには、まず、歯科医院で小児期からう蝕(虫歯)や歯周病などの治療をして、両側の顎で噛める環境を整えることが大切です。
欠けた歯を放置して、偏咀嚼となった症例を歯周病治療、矯正治療で改善した症例を呈示します(図1~3)。

また、歯や歯並びにとくに問題はなくても、単なる癖で偏咀嚼をしてしまっている場合もあります。

食事をするときは、右側で10回噛んだら、左側で10回噛むというように、左右均等に噛むことを意識しましょう。また、軟らかいものばかり食べていては、噛む回数が少なくなって左右でバランスよく噛むのが難しいうえ、顎の力も低下してしまいます。根菜類、こんにゃく、きのこ、海藻類を使った料理や、野菜スティックなど、噛み応えのあるメニューを積極的に取り入れ、噛む回数を増やしましょう。

稲垣 幸司 先生

監修者 稲垣 幸司 先生 (愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授 同大学歯学部歯周病学講座兼担准教授)
愛知学院大学歯学部卒業 同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。同大歯学部(歯周病学講座)講師などを経て、ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座客員研究員。愛知学院大学歯学部助教授、2007年より現職。日本歯周病学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本歯科保存学会専門医、子どもをタバコから守る会・愛知世話人代表、禁煙心理学研究会世話人、日本小児禁煙研究会理事。アメリカ歯周病学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会、日本禁煙学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科衛生学会など国内外の所属学会多数。歯周病と全身疾患、特に骨粗鬆症や糖尿病との関係や脱タバコ教育、禁煙支援に関する研究などを行う。