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口の中が乾く「ドライマウス」に悩んでいませんか?

食事を減らしているのに太る……栄養不足のせいかもしれません

口の中が乾き、痛みや味覚異常を伴うことがある「ドライマウス」。原因は、加齢や薬の副作用、ストレス、シェーグレン症候群、糖尿病などさまざまです。原因によって対処法が異なるので、まずは歯科や口腔外科、ドライマウス専門外来を受診して、原因を明らかにしましょう。

唾液が減ることで、口の中の乾燥や痛み、味覚障害などが起こる

「ドライマウス」は「口腔乾燥症」ともいい、唾液の分泌量が減って口の中が乾燥する状態を指します。口の中の乾燥以外にも、舌が痛い、口の中がネバネバする、食べものの味がよくわからない、乾いた食品が食べづらい、口臭がするなど、さまざまな症状を伴うことがあります。 日本では約3000万人の患者がいると推計されており、その多くは中高年の女性ですが、最近では若い人にも増えています。

唾液は、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がくかせん)、舌下腺(ぜっかせん)などの唾液腺から分泌されています。個人差もありますが、その量は、成人の場合で1日に約1.5リットルにもなります。

唾液には抗菌作用や自浄作用があるほか、消化吸収を助ける、味覚を鋭くする、粘膜を保護するなど、私たちの健康を守るために重要な役割を果たしています(参考:2011年3月「唾液に秘められたパワー」)。

そのため何らかの原因で唾液の分泌量が減ると、先述の症状があらわれるのです。また、う蝕(虫歯)や歯周病、口の中の細菌が肺に入って起こる誤嚥性肺炎(参考:2013年1月「誤嚥性肺炎の予防で大切な口腔ケア」)、カンジダ菌の増殖による口腔カンジダ症などのリスクも高まります。

ドライマウスの原因は多様

誰でも加齢に伴って唾液の分泌量が減りますが、ドライマウスは加齢以外にもさまざまな原因が考えられ、複数の原因が重なっていることも少なくありません。

ドライマウスの主な原因

1.脱水状態

糖尿病:糖尿病では尿がたくさん出て脱水状態になり、口の中が乾きやすくなります。

腎不全:慢性腎不全が進行すると人工透析が必要になりますが、人工透析によって体内の余分な水分が除去されることで、ドライマウスが起こる場合があります。

薬や治療の副作用:利尿薬などの副作用で、尿がたくさん出て、口の中が乾きやすくなります。

口呼吸:口呼吸をする癖のある人や、眠っているときにいびきをかく人は、唾液が蒸発して口の中が乾きやすくなります。

2.唾液分泌量の減少

唾液腺の病気(腫瘍、炎症、老化など):唾液腺に腫瘍ができたり炎症が起きたり、あるいは唾液腺の細胞が老化すると、唾液の分泌機能が低下して唾液の分泌量が減ります。

中枢や末梢の神経障害:脳梗塞や脳出血などの脳血管障害で口の周りの筋肉がまひすると、唾液の分泌量が減ることがあります。

精神的ストレス:唾液の分泌は、自律神経によってコントロールされています。緊張したりストレスを感じたりすると交感神経が優位になり、唾液の分泌が抑制されます。反対に、リラックスしているときは、副交感神経の働きによって唾液はよく分泌されます。そのため、常に強いストレスにさらされていると、口の中が乾く原因になります。

喫煙:タバコの煙に含まれるタールや ニコチンなどの有害物質によって血行が悪くなり、唾液の分泌機能が低下して、唾液分泌量が減ります。

薬の副作用:高血圧などの治療に用いられるカルシウム拮抗薬、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、鎮痛薬などの副作用で、唾液の分泌量が減ることがあります。

シェーグレン症候群:免疫システムの異常により、自分自身を異物とみなして攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。唾液腺や涙腺の組織が破壊され、唾液や涙の分泌量が減少して口や目が乾燥します。

更年期障害:唾液腺は性ホルモンの影響を受けるため、女性ホルモンの分泌が急激に減る更年期には、唾液の分泌量も減ります。また、更年期には自律神経のバランスが乱れやすいことも影響していると考えられます。

口周りの筋力の低下:加齢による筋力の低下のほか、やわらかい食品ばかりを食べていて口の周りの筋力が衰えると、唾液の分泌量が減ります。

原因を取り除くとともに、唾液の分泌を促して症状の改善を

ドライマウスは原因によって治療法が異なるので、まずは原因を明らかにする必要があります。口の中の強い乾燥が続いたら、歯科や口腔外科、ドライマウス専門外来(ドライマウス研究会のホームページから歯科医院リストが公開されています。)を受診しましょう。必要に応じてほかの診療科と連携しながら治療を進めます。

薬の副作用が原因の場合は薬の量を減らしたり、種類を変更することを検討します。糖尿病などドライマウスを引き起こしている病気がある場合は、その治療を行うことで症状の改善が期待できます。

口の中の乾燥や痛みを緩和する対症療法としては、唾液とほぼ同じ成分の液体の人工唾液や、口の中に塗る保湿ジェル、洗口液などを用いて、口の中を保湿する方法があります。

こまめに水分をとる、飴をなめる、ガムを噛むなども口の中を潤すのに効果的ですが、う蝕(虫歯)や歯周病予防のためにも、糖分を含まないものを選ぶようにしてください。

また、唾液の分泌を促す薬や漢方薬による薬物療法が行われる場合もあります。

楽しくよく噛んで食べることや、「イー」「ウー」と声を出しながら口を大きく動かして唾液腺を刺激することも、唾液の分泌量を増やすのに有効です。

歯並びや噛み合わせ、入れ歯などに問題があってしっかりと噛むことができない場合は、歯科で治療を受けるようにしてください。

稲垣 幸司 先生

監修者 稲垣 幸司 先生 (愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授 同大学歯学部歯周病学講座兼担准教授)
愛知学院大学歯学部卒業 同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。同大歯学部(歯周病学講座)講師などを経て、ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座客員研究員。愛知学院大学歯学部助教授、2007年より現職。日本歯周病学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本歯科保存学会専門医、子どもをタバコから守る会・愛知世話人代表、禁煙心理学研究会世話人、日本小児禁煙研究会理事。アメリカ歯周病学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会、日本禁煙学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科衛生学会など国内外の所属学会多数。歯周病と全身疾患、特に骨粗鬆症や糖尿病との関係や脱タバコ教育、禁煙支援に関する研究などを行う。