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タバコはお口の健康に悪影響(健康障害)を及ぼす

タバコはお口の健康に悪影響(健康障害)を及ぼす

タバコ*1が肺がんをはじめ、がんの発生リスクを高めていることは多くの研究で明らかになっています。口腔がんや歯周病、口臭といったお口の健康とも深くかかわっています。自分の健康のためにも、周囲の人を受動喫煙の健康障害から守るためにも、禁煙を。

5月31日は「世界禁煙デー」

 タバコは、世界中で予防しようと思えば予防できる、最大にして単一の死亡原因です。
  タバコさえ 吸わなければ
  タバコさえ なければ
  タバコさえ 捨てれば
  タバコさえ 買わなければ
  タバコさえ 勧められなければ
 その個人のいろいろな病気の大きな原因の1つがなくなります。しかも、それだけではありません。周囲への受動喫煙、3次喫煙*2のリスクもなくなってしまうので、その波及効果は予想以上に大きいのです。このような病気の原因は他にはありません。
  WHO(世界保健機関)は1988年以降、毎年5月31日を世界禁煙デーと定め、タバコ使用の危険性とタバコ産業の事業展開について広く社会に情報を送り、世界中の人々が健康と健康的に生活する権利を主張し、未来の世代を守るために何をすることができるかを知らせています。そして毎年、禁煙デーのスローガンを発表しています。
 26回目を迎える今年のテーマは、「タバコの宣伝、販売促進活動、スポンサー活動を禁止しよう(Ban tobacco advertising, promotion and sponsorship)」(World No Tobacco Day)です。日本をはじめとする「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(たばこ規制枠組条約)、WHO Framework Convention on Tobacco Control (FCTC)」を締結した国々(WHO加盟国193か国中176か国(91.2%)、2013年5月末現在)には、タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動を禁止することが求められています。この条約は、WHOの下で作成された保健分野における初めての多数国間条約で、11部構成で、38の条文からなりますが、主に下記のような内容が盛り込まれています。

たばこ規制枠組条約の主な内容

(1)公共の場所において、タバコの煙にさらされないようにする。
(2)タバコ製品のパッケージに、消費者に誤解を与える恐れのある表示を用いない。また、パッケージの30%以上のスペースを用いて、タバコによる健康被害に関する警告表示を掲載する
(3)タバコの宣伝、販売促進、スポンサー活動を包括的に禁止する。
(4)未成年者に対するタバコの販売を禁止するための効果的な措置を実施する。

口腔がんの8割がタバコによるもの

 日本では、タバコのパッケージの警告表示は「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります」などの文章のみですが、諸外国では、文章とともに、タバコによる健康被害をあらわす写真が用いられています。
 WHOは2009年の世界禁煙デーにおいて、「真WHOは実を見せることが命を救う:健康被害について写真で示そう(SHOWING THE TRUTH, SAVING LIVES: THE CASE FOR PICTORIAL HEALTH WARNINGS)」というテーマを掲げ、パンフレットで世界各国の写真を用いたタバコのパッケージを紹介しています。写真による警告はインパクトがあり、たばこの深刻な害がより伝わりやすく、多くの喫煙者に禁煙を促す効果があるとされます。(WHO「2009年世界禁煙デー」パンフレット【英語】参照)

 WHOによると、毎年約600万人(6秒に1人)がタバコによって命を奪われており、そのうちの60万人(1分に1人)は受動喫煙によるものとされています。
 タバコは肺がんだけでなく、さまざまながんのリスクを上昇させます。また、心臓病や脳卒中、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のほか、流産や早産、低出生体重児などともかかわりが深いことがわかっています。口の中も例外ではなく、喫煙者は口腔がんや歯周病、口臭などが起こりやすくなります。(「禁煙は歯周病治療の第一歩」参照)
 口腔がんは、舌や歯肉(歯ぐき)、頬の内側など口の中にできるがんの総称です。喫煙は口腔がんの最大の危険因子とされ、口腔がんの8割が、タバコが原因といわれています。
 諸外国のタバコのパッケージに口腔に関する写真が用いられていることからも、タバコとお口の健康は密接に関係していることがわかるでしょう。

日本でも世界禁煙デーからの1週間を「禁煙週間」と定め、禁煙および受動喫煙防止を呼びかけるイベントなどが全国各地で行われます。これを機に、あなた、あなたの大切なひとの禁煙を考えませんか?

*1「タバコ」は、外来語なのでカタカナ表記が正しいのですが、日本では誤って、ひらがな、もしくは、漢字表記されています。本稿では、固有名詞である条約名だけ平仮名表記にしました。
*2三次喫煙(thirdhand smoke)とは、残留タバコ成分による健康被害のことで、タバコ煙が消失した後にも残るタバコ煙による汚染、さらに、タバコ煙の残存物質が室内などの化学物質と反応して揮発する発がん性物質による害を含みます。つまり、タバコ煙に含まれる物質が、喫煙者の髪の毛、衣類、部屋(車内)のカーテン、ソファなどに付着し揮発したものが汚染源となり、第三者がタバコの有害物質に暴露されます。したがって、換気扇を使用したり、窓を開けて換気を行っても、三次喫煙のリスクを排除できません。タバコ煙から排出されるニコチンや他の有害物質のほとんどは空気中ではなく、物の表面について揮発するためです。

稲垣 幸司 先生

監修者 稲垣 幸司 先生 (愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授 同大学歯学部歯周病学講座兼担准教授)
愛知学院大学歯学部卒業 同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。同大歯学部(歯周病学講座)講師などを経て、ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座客員研究員。愛知学院大学歯学部助教授、2007年より現職。日本歯周病学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本歯科保存学会専門医、子どもをタバコから守る会・愛知世話人代表、禁煙心理学研究会世話人、日本小児禁煙研究会理事。アメリカ歯周病学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会、日本禁煙学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科衛生学会など国内外の所属学会多数。歯周病と全身疾患、特に骨粗鬆症や糖尿病との関係や脱タバコ教育、禁煙支援に関する研究などを行う。