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根元から抜けた歯は元に戻せる可能性がある 知っておくべきこと!

根元から抜けた歯は元に戻せる可能性がある 知っておくべきこと!

事故やけがなどで歯が根元から抜けてしまったとき、すぐに適切に対処すれば元通りに治せる可能性があります。ポイントになるのは、歯の根の表面にある歯根膜。この組織を乾燥させないように、抜けた歯を牛乳か生理食塩水に浸して、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。普段から、緊急時に備えて、正しい知識をもっておくことが大切です。

抜けた歯は冷たい牛乳か生理食塩水に浸して、30分以内に受診を

事故にあったり、転んだりして顔を強く打つと、歯を傷めてしまうこと(歯の外傷)があります。歯の外傷は、1~2歳の乳幼児と7~8歳の学童に多くなる傾向があります。すなわち、乳幼児では、日常での転倒、衝突、転落、打撲に、学童では、交通事故や暴行、スポーツによる転倒、衝突、接触に伴うことが多くなります。歯が欠けたり折れたり、抜けてしまったりして歯科医院を受診する患者さんは、意外と多いようです。こんなときはあわててしまいがちですが、迅速に適切な対応をすれば、歯を元通りにできる場合もあります。

歯が欠けたり折れたりしたら

歯にヒビが入ることを「亀裂(きれつ)」、歯が折れることを「破折」(はせつ)といいます。歯肉(歯ぐき)から出ている部分の「歯冠」が折れる場合と、歯を支える歯槽骨に埋まった部分の「歯根」が折れる場合があります(図1)。小さく破折して、歯髄(しずい=歯の神経)に影響がなければ、破折部分を修復する治療(詰める処置)を行います。修復の際に使用することがあるので、欠けたり折れたりした歯の破片は捨てずに、歯科医院に持っていきましょう。

歯根が折れてしまった場合は、残念ながら元には戻せないので抜歯が必要になりますが、折れた位置によりますので、念のため折れた歯を歯科医院に持っていくとよいでしょう。抜歯後は、ブリッジや部分床義歯(部分入れ歯)などによる治療が行われます。(「歯が抜けたまま放置しないで!」参照)

歯が抜けてしまったら

歯が根元から抜けてしまった場合は、抜けた歯の根の表面を乾燥させないようにすることが大切です。歯の根の表面には「歯根膜(しこんまく)」という組織(図1)があり、歯根と歯槽骨をつなぐ大切な役割を果たしています。学校の保健室などに「歯の保存液」があれば、それに抜けた歯を浸して歯科医院に持っていきます。歯の保存液がない場合は、牛乳か薬局で購入できる生理食塩水に浸しますが、水道水やミネラルウォーターは、浸透圧の関係で歯根膜の組織が変性してしまうことがあるので避けてください。飲み込まないように注意して、口の中に入れておくという方法もあります。その場合は、汚染されていなければ、抜けた歯の歯槽骨の中、もしくは頬の内側や舌の下に抜けた歯を挟むとよいでしょう。
歯根膜はデリケートなので、抜けた歯を拾う際には、根の部分(歯根膜部分)には触らずに歯冠部分を持つようにしてください。

歯根膜が生きていれば、抜けた歯を元の場所に戻して固定すると、歯根膜を介して、1か月ほどで元通りになります。抜けた歯を元に戻せるかどうかは、時間の勝負です。抜け落ちてから30分以内に再植するのが理想とされているので、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。また、固定後、歯の揺れや痛みなどの深い症状がなくなっても、歯髄への影響を慎重に定期的に歯科医院で確認してもらいましょう。歯髄の状況によっては、早めに歯髄の処置が必要になる場合もあります。

歯髄が壊死して歯が黒ずむことも

歯をぶつけたりしたときに、折れたり抜けたりしなくても、歯に力が加わって位置が変わってしまうことがあります。歯肉(歯ぐき)や歯槽骨が傷ついた場合は歯を失う可能性もあるので、早めに歯科医院を受診しましょう。

また、ぶつけた直後は何もなくても、数か月後に歯が黒ずんでくることがあります。これは、歯髄が傷つき、しだいに壊死してしまったことで起こります。歯髄処置を行い、ホワイトニングである程度色を白くできる場合もあるので、歯科医院で相談してみてください。また、スポーツの際には、歯の外傷の危険を回避するために、マウスガードの使用が望まれます。なお、日本スポーツ歯科医学会では、認定マウスガードテクニカルインストラクターを養成しています。マウスガードの制作に関しても、歯科医院で相談してください。

稲垣 幸司 先生

監修者 稲垣 幸司 先生 (愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授 同大学歯学部歯周病学講座兼担准教授)
愛知学院大学歯学部卒業 同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。同大歯学部(歯周病学講座)講師などを経て、ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座客員研究員。愛知学院大学歯学部助教授、2007年より現職。日本歯周病学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本歯科保存学会専門医、子どもをタバコから守る会・愛知世話人代表、禁煙心理学研究会世話人、日本小児禁煙研究会理事。アメリカ歯周病学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会、日本禁煙学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科衛生学会など国内外の所属学会多数。歯周病と全身疾患、特に骨粗鬆症や糖尿病との関係や脱タバコ教育、禁煙支援に関する研究などを行う。