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歯周病の外科治療「フラップ手術」とは

歯周病の外科治療「フラップ手術」とは

重度の歯周病には手術が必要になることがあります。歯周外科手術にはいくつかの方法がありますが、歯周ポケットに対する代表的なのが「フラップ手術」です。歯肉(歯ぐき)を切開して、歯周ポケット内に深くまで入り込んだ歯垢(プラーク)や歯石などを取り除きます。

歯周組織の破壊が進むと手術が必要に

歯周炎は、歯肉(歯ぐき)だけでなく、歯を支える歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)に炎症が起きる病気です。歯と歯肉(歯ぐき)の境目 には、「生理的歯肉溝(せいりてきしにくこう)」と呼ばれる0.5~2mmほどのすき間があります。このすき間に、歯周病関連細菌のかたまりである歯垢 (プラーク)や、歯垢(プラーク)が固まった歯石が付着すると、歯肉(歯ぐき)が炎症を起こします(図1)。そして、徐々に歯と歯肉(歯ぐき)の境目のす き間が深くなっていきます。これを「歯周ポケット」(図2)といいます(参考:歯周病対策は、若い世代から早めに対策を!)。

重度の歯周病では、歯周ポケットの深さが6mm以上になり、放置すると、最終的には歯槽骨が溶けて歯が抜け落ちてしまいます(図3)。

歯周病の治療で重要なのは、歯垢(プラーク)や歯石を除去してコントロールすることです。軽度の歯周炎であれば、毎日の適切な口腔清掃(セルフケア)とともに、歯科医院で「スケーラー」という専用の器具を使った「スケーリング」(歯冠部や歯周ポケット内の歯垢や歯石を取り除く治療)や、「ルートプレーニング」(歯周病関連細菌由来の歯根部セメント質に入り込んだ毒素を除去し、歯肉が再び付着しやすいように歯根表面をなめらかにする治療)などを行えば、症状の改善が期待できます。

しかし、歯周組織の破壊が進んで歯周ポケットが深くなり、歯周基本治療であるスケーリングやルートプレーニングでは歯垢(プラーク)や歯石を除去できず、歯周炎が進行する時には、歯周ポケットの深さを減少させる歯周外科手術が必要になることがあります。

また、症例によっては、特殊な材料を用いて部分的に失われた歯周組織を再生させる手術(歯周組織再生療法)を行う場合もあります。歯周外科手術は、それぞれの病態にあった方法が適応されます。

歯肉(歯ぐき)を切開し、歯肉弁を形成し、歯根面を明視できるようにして歯垢(プラーク)や歯石を取り除く

歯周ポケットを改善するための歯周外科手術の一つが「フラップ手術」(図4)で、歯周基本治療を行っても歯周ポケットが残り、歯周ポケットの深さが4mmを超えるような場合に行います)。

まず、局所麻酔をかけて歯肉(歯ぐき)を切開します。そして、歯周ポケット内の歯根を見えるようにして、歯周ポケット内に残存した炎症性組織(不良肉芽組織)を除去し、スケーリングやルートプレーニングなどで歯垢(プラーク)や歯石を取り除きます。歯垢(プラーク)や歯石を取り除いた後は、必要があれば、歯槽骨を整形し、歯肉(歯ぐき)を縫い合わせ、約1週間後に抜糸をします。フラップ手術に必要な時間は、対象となる歯の本数にもよりますが、約1~2時間になります。

フラップ手術は、歯周ポケットの奥深くの病巣を直接目で見て確認できるので、徹底的にきれいにすることができるのが利点です。ただし、これにより歯周炎の進行を一時的に食い止めることができますが、すでに破壊された歯周組織を元に戻すことはできず、手術後に歯肉(歯ぐき)が少し下がってしまうという欠点があります。

稲垣 幸司 先生

監修者 稲垣 幸司 先生 (愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授 同大学歯学部歯周病学講座兼担准教授)
愛知学院大学歯学部卒業 同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。同大歯学部(歯周病学講座)講師などを経て、ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座客員研究員。愛知学院大学歯学部助教授、2007年より現職。日本歯周病学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本歯科保存学会専門医、子どもをタバコから守る会・愛知世話人代表、禁煙心理学研究会世話人、日本小児禁煙研究会理事。アメリカ歯周病学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会、日本禁煙学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科衛生学会など国内外の所属学会多数。歯周病と全身疾患、特に骨粗鬆症や糖尿病との関係や脱タバコ教育、禁煙支援に関する研究などを行う。