文字サイズ

生まれつき歯が足りない「先天性欠如歯」

歯周病の外科治療「フラップ手術」とは

日本小児歯科学会が行った調査*では、永久歯の数が足りない子どもが約10人に1人いることがわかっています。永久歯の数が足りなくても、特に治療の必要がないこともありますが、歯並びや噛み合わせなどに影響がある場合は、治療を検討します。

何らかの理由で歯のもととなる「歯胚」が作られない

本来、乳歯は20本、永久歯は第三大臼歯(親知らず)を除いて28本生えますが、生まれつき歯が足りないことがあります。これを「先天性欠如歯」といいます。

歯のもととなる「歯胚(しはい)」は、お母さんのおなかの中にいるときに作られます。一般的に、顎骨の中で乳歯の歯胚の形成が始まるのは胎生7週ごろで、胎生4か月ごろには歯が硬くなる「石灰化」が始まります。そして、個人差はありますが、生後半年ほど経つと、乳歯が生え始めます。
永久歯は6歳ごろに生え始め、12歳ごろには第三大臼歯を除くすべての永久歯が生えそろいます。驚くことに、一部の永久歯の歯胚も、お母さんのおなかの中にいるときに形成されます(図1)。
先天性欠如歯は、何らかの理由で歯胚が作られないことで起こります。乳歯にも永久歯にも見られ、1本もしくは2~3本だけ欠如することもあれば、まれに10本以上欠如することもあります。原因はよくわかっていませんが、遺伝や全身疾患、薬の副作用などが影響しているのではないかと考えられています。

2007~2008年に日本小児歯科学会が行った全国調査(*)では、歯科を受診した7歳以上の子ども15,544人(男子7,502名、女子8,042名)のうち、乳歯の先天性欠如は75人(0.5%)に、永久歯の先天性欠如は1,568人(10.1%)に確認されました。
永久歯の先天性欠如のうち、男子が9.1%、女子が11.0%で、上顎のみに欠如が認められたのは2.5%、下顎のみは5.7%、上顎・下顎の両方は1.9%でした。歯の種類別では、下顎第2小臼歯(中央から5番目の歯)と下顎側切歯(中央から2番目の歯)の欠如が多く、上顎第2小臼歯、上顎側切歯の順に見られました(図1)。

(*)日本小児歯科学会学術委員会:日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査.小児歯誌,48(1):29-39, 2010

歯並びや噛み合わせに影響が及ぶ場合も

乳歯に先天性欠如が見られると、永久歯も欠如しやすいといわれていますが、きちんと生えてくることもあります。一方、乳歯が全部そろっている場合でも、永久歯が欠如することもあります。

一般的に、乳歯の先天性欠如の多くは、特に治療はせず様子を見ます(図2)。

乳歯は、その下の永久歯の成長に伴い、破骨細胞によって歯根が吸収されて、やがて自然に抜け落ちます。永久歯が欠如している場合は歯根の吸収がうまくいかず、乳歯が抜けずに残っていることがあります。そのようなときは、乳歯をできるだけ長く残すようにしますが、乳歯は永久歯に比べてう蝕(虫歯)になりやすく、歯根も短いので、一生残すのは困難です。

乳歯が抜け落ち、歯の本数が不足して歯と歯の間に大きなすき間がある状態が続くと、歯が動いたり傾いたりして、歯並びや噛み合わせ、発音などに影響が出ることがあります。永久歯に生え替わるのが遅いと感じたら、早めに歯科医師に相談しましょう。将来を見据えた継続的な管理が必要で、顎の成長などに応じて、歯列矯正やブリッジ、部分入れ歯、インプラントといった治療を検討します。

稲垣 幸司 先生

監修者 稲垣 幸司 先生 (愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授 同大学歯学部歯周病学講座兼担准教授)
愛知学院大学歯学部卒業 同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。同大歯学部(歯周病学講座)講師などを経て、ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座客員研究員。愛知学院大学歯学部助教授、2007年より現職。日本歯周病学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本歯科保存学会専門医、子どもをタバコから守る会・愛知世話人代表、禁煙心理学研究会世話人、日本小児禁煙研究会理事。アメリカ歯周病学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会、日本禁煙学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科衛生学会など国内外の所属学会多数。歯周病と全身疾患、特に骨粗鬆症や糖尿病との関係や脱タバコ教育、禁煙支援に関する研究などを行う。