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抜歯後のトラブルにはあわてずに対処を

抜歯後のトラブルにはあわてずに対処を

抜歯をした後に、出血が止まらない、痛みが続く、腫れが引かないなどのトラブルが起こることがあります。あらかじめ起こる可能性のあるトラブルとその対処法を知っておけば、いざというときにあわてずに済みます。

抜歯後は安静が第一

一生自分の歯で噛んで食事を楽しむためにも、歯は大切にしたいものです。しかし、う蝕(虫歯)や歯周病が進行したとき、親知らず(智歯、第3大臼歯)が斜めや水平に生えているときなどに、抜歯が必要になることがあります。

抜歯は手術の一種ですから、当日は体調を整えて臨みましょう。発熱や寝不足、二日酔いなどで体調が優れないときは、歯科医に相談して日程を変更してもらってください。喫煙者は、禁煙することが大前提です。体の抵抗力が低下していると、抜歯後のトラブルが起こりやすくなります。

また、抜歯後は安静にすることが大切です。当日は運動や飲酒は控え、入浴はシャワーで済ませましょう。血行がよくなると出血が起こる原因になります。

抜歯窩(ばっしか:抜歯後に残った傷あと)には、「血餅(けっぺい)」という血の塊ができます。これは、皮膚の傷でいうと「かさぶた」に当たるもので、抜歯によってむき出しになった歯槽骨(歯を支える骨)を守る役割があります。血餅が脱落してしまうと、傷口がふさがるのに時間がかかったり、トラブルが起こりやすくなるので、抜歯後に強くうがいをしたり、唾液を強く吐き出すのは避けましょう。また、食事をするときは、抜歯をしたのとは反対側の歯で噛むようにしてください。

出血が止まらないときは、ガーゼを15~30分強く噛む

抜歯後に少量の出血が見られるのは、よくあることです。唾液に血液が混じる程度の出血が、抜歯の翌日くらいまで続くのは心配いりません。出血がなかなか止まらないときは、清潔なガーゼを丸めて抜歯窩に当て、15~30分程度しっかりと噛んでください。それでも出血が止まらないときは、歯科医院を受診しましょう。

出血が止まらないときには、局所的な原因と全身的な原因が考えられます。局所的な原因で多いのは、抜歯の際に、歯の周りにある不良肉芽組織(歯周病菌に感染して炎症を起こした組織)が十分に取り除けていないこと。また、歯槽骨や顎骨の骨折、歯肉(歯ぐき)の血管の損傷などでも出血が止まりにくくなります。そこで、抜歯後の出血が予測されるような部位では、一次閉鎖といって、縫合により抜歯窩を歯肉弁で完全に被覆しておくと、術後出血や不快症状も少なく、傷の治癒も早くなります(図1、2)。

一方、全身的な原因では、血液や肝臓の病気のほか、脳卒中や心筋梗塞などの治療に用いられる血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)の影響が考えられます。持病のある人や使用中の薬がある人は、抜歯前に歯科医に伝えるようにしてください。

抜歯後に痛んだら、消炎鎮痛薬を服用して様子を見よう

抜歯をすると、多くの場合、消炎鎮痛薬や抗菌薬を処方されます。麻酔が切れて痛みが出てきた場合は、処方された消炎鎮痛薬を服用して様子を見ましょう。また、抜歯後の細菌感染を防ぐために、抗菌薬は指示通りに服用するようにしてください。

通常、抜歯から時間が経つにつれて痛みは軽くなっていきますが、2~3日経って痛みが強くなってきた場合は、細菌感染やドライソケットが疑われるので、歯科医院を受診してください。

ドライソケットは、うがいなどで血餅が脱落したり、細菌感染で血餅が溶けたりすることで傷口が露出し、強く痛む状態です。下顎の親知らずの抜歯後に起こりやすいとされます。抜歯窩に抗菌薬の軟膏を注入したり、抜歯窩を再び出血させて新しい血餅を作ったりして、自然に治るのを待ちます。痛みがなくなるまで2~4週間ほどかかります。

腫れは水で濡らしたタオルで冷やすと楽になる

親知らずを抜くと、歯肉や頬が大きく腫れることがありますが、1週間ほどすると落ち着いてくることがほとんどです。腫れがひどいときは、水で濡らしたタオルで頬を冷やすと楽になるので、試してみてください。ただし、氷などで過度に冷やすと逆効果なので、注意しましょう。

稲垣 幸司 先生

監修者 稲垣 幸司 先生 (愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授 同大学歯学部歯周病学講座兼担准教授)
愛知学院大学歯学部卒業 同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。同大歯学部(歯周病学講座)講師などを経て、ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座客員研究員。愛知学院大学歯学部助教授、2007年より現職。日本歯周病学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本歯科保存学会専門医、子どもをタバコから守る会・愛知世話人代表、禁煙心理学研究会世話人、日本小児禁煙研究会理事。アメリカ歯周病学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会、日本禁煙学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科衛生学会など国内外の所属学会多数。歯周病と全身疾患、特に骨粗鬆症や糖尿病との関係や脱タバコ教育、禁煙支援に関する研究などを行う。