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指しゃぶりは何歳まで大丈夫?

指しゃぶりは何歳まで大丈夫?

指しゃぶりは、多くの赤ちゃんに見られる自然な行為です。しかし、4歳ごろを過ぎても習慣的に指しゃぶりを行っていると、歯並びや噛み合わせに影響が出る可能性があります。

3歳ごろまでは見守っていても大丈夫。生理的な現象です!

指しゃぶりはお母さんのおなかの中にいるときにも見られる行為で、生まれてすぐにおっぱいを吸うための練習ではないかと考えられています。生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の意思で手足を自由に動かすことはできませんが、生後2~3か月ごろになると手足の動きが活発になり、口元に偶然触れた指を反射的に吸うようになります。指しゃぶりには気持ちを落ち着かせる効果もあり、次第に自分の意思で指しゃぶりをするようになりますが、これは、発育過程で行う自然な行為です。

生後4~5か月になると、指だけでなく、手に触れたものを何でもなめたり、しゃぶったりするようになります。この時期に最も感覚が発達している口の中を使って、物の形や味、感触を確かめているのです。この際に、タバコを誤って誤飲させないように留意してください。厚生労働省「平成24年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」によると、平成24年度で最も多く報告された子どもの誤飲事故の原因が、タバコで、34年間連続の首位になっています。保護者がタバコを止める、吸わないことが最善の予防になります。
多くの場合、おしゃべりをするようになったり、積み木などの手を使った遊びができるようになると、指しゃぶりの頻度は自然と減っていき、眠いときや退屈なときなどだけに見られるようになります。

指しゃぶりをする習慣があると歯並びや噛み合わせに影響するのではないかと心配になりますが、赤ちゃんのころは見守っていて構わないでしょう。何歳ごろまでなら問題ないかは専門家によって意見が分かれますが、日本小児歯科学会「小児科と小児歯科の保健検討委員会」では、「3歳ごろまでは、とくに禁止する必要がない」という見解を示しています。

歯並びの乱れが食事や発音に影響も

個人差はありますが、生後6か月ごろになると、まず下の前歯(乳中切歯)が生えてきます。そして、2歳6か月ごろに上の奥歯(第二乳臼歯)が生え、20本の乳歯がすべてそろいます。

乳歯が生えそろった後も頻繁に指しゃぶりをしていると、乳歯に「開咬(かいこう)」が起こりやすくなります。開咬とは、奥歯を噛み合わせたときに、前歯の上の歯と下の歯の間にすき間があく状態のことです。また、上の前歯が前方に傾く「上顎前突」(いわゆる「出っ歯」)や、上の歯の幅が狭くなって奥歯の噛み合わせがずれる「交叉咬合(こうさこうごう)」などが起こることもあります。このような状態は、外見的な問題だけにとどまらず、前歯で食べものを噛み切れない、発音がしづらい、口呼吸になるなどの問題も伴います(図1a, b)。また、上下顎の間に指を入れて強く吸うと、歯や顎に強い変形力が働き、上顎前歯部が前方傾斜し、奥歯(臼歯部)では、歯列幅の狭窄を伴うV字型歯列弓になります(図1c)。

【図1】開咬の症例(13歳男子)

開咬により、口呼吸(a)、舌癖等を併発し、口呼吸線(b:青矢印)から露出した歯肉の炎症が引きにくくなり、増殖傾向になります。 上顎口蓋部は、V字型歯列弓(c:緑矢印)になります。

乳歯の歯並びは永久歯の歯並びにも影響するので、4歳ごろを過ぎても指しゃぶりをしているようなら、少しずつやめられるように導いてあげたいものです。その際、無理やり、やめさせようとすると、逆効果になることがあります。すなわち、手を使った遊びや運動をする時間を増やす、夜寝つくまで手をつないで添い寝をする、指しゃぶりをしていなかったらほめるなど、励ましたり、ほめたりしながら、指しゃぶりをやめたいという意欲をもたせることや別のことに関心が向くように働きかけることが大切です。早い段階で指しゃぶりをやめれば、歯並びが自然に治ることもあります。永久歯が生え始める6歳ごろ(永久歯萌出開始後)になっても指しゃぶりがやめられなかったり、歯並びが乱れている場合には、専門的な筋機能療法(MFT)や矯正治療が必要になりますから、一度小児歯科や矯正歯科に相談することをお勧めします。

稲垣 幸司 先生

監修者 稲垣 幸司 先生 (愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科教授 同大学歯学部歯周病学講座兼担准教授)
愛知学院大学歯学部卒業 同大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)。同大歯学部(歯周病学講座)講師などを経て、ボストン大学歯学部健康政策・健康事業研究講座客員研究員。愛知学院大学歯学部助教授、2007年より現職。日本歯周病学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本歯科保存学会専門医、子どもをタバコから守る会・愛知世話人代表、禁煙心理学研究会世話人、日本小児禁煙研究会理事。アメリカ歯周病学会、国際歯科研究学会、日本歯周病学会、日本禁煙学会、日本骨粗鬆症学会、日本歯科衛生学会など国内外の所属学会多数。歯周病と全身疾患、特に骨粗鬆症や糖尿病との関係や脱タバコ教育、禁煙支援に関する研究などを行う。