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糖尿病を改善するためにも歯周病を治そう

糖尿病を改善するためにも歯周病を治そう

歯周病と糖尿病は密接に関連しており、糖尿病の患者さんは歯周病が重症化している人が多く、歯周病が重症の人は糖尿病が悪化しやすいことがわかっています。糖尿病や歯周病が気になる人は、その両方について早期発見と重症化予防に努め、きちんと治療しましょう。

歯周病が重症の人は、そうでない人の3倍も糖尿病が悪化しやすい

歯周病が悪化すると、その部分の炎症によって産生される「TNF-α(アルファ)」という悪玉の生理活性物質が多くなり、歯肉から血管内に入ります。血中のTNF-αが増えると、インスリンが効きにくくなって血糖値の上昇が続き、糖尿病が悪化すると考えられています。

実際に、糖尿病予備群の人を対象に、歯周病の重症度と糖尿病との関係を調べた研究があります。歯周病が重症だった人と重症でなかった人の2グループに分けて、2年後に糖尿病になった割合を調べたところ、歯周病が重症だった人の37%、歯周病でなかった人の11.3%が糖尿病と診断されました。歯周病が重症だった人は、そうでなかった人の約3倍も、糖尿病になりやすいのです(*1)。

一方で、糖尿病によって増える物質(最終糖化産物)が歯槽骨(しそうこつ)の吸収を促すため、糖尿病があると歯周病が悪化するといわれています。糖尿病の患者さんと、そうでない人の歯周病の重症度を年齢階級ごとに比較した研究では、どの年齢階級でも、糖尿病の患者さんのほうが、そうでない人の2倍も歯周病が重症化していました(*2)。 

最近では、「歯周病は糖尿病の合併症の一つ」とまでいわれており、歯周病と糖尿病は互いに影響しあって悪循環を起こしているのです。

歯周病は生活習慣病の隠れた黒幕!

また、歯周病が悪化し、それによって歯を失うと、咀嚼(そしゃく)機能の低下につながります。咀嚼機能が低下すると高エネルギー、低食物繊維の不健康な食生活を生み、運動不足も加わって、肥満を引き起こします。肥満は糖尿病やメタボリックシンドロームの重要なリスクとなるだけでなく、脂肪細胞から分泌される炎症物質によって歯周病は一層悪化します。

さらに、歯周病菌や歯周病が原因で増える炎症物質は動脈硬化も促進させ、脳梗塞や心筋梗塞など、命にかかわる病気につながることも。歯周病は、生活習慣病の隠れた黒幕であるといえます。

糖尿病の人は、歯周病治療によって血糖値が改善する

しかし、逆に、歯周病を治療すると糖尿病が改善し、糖尿病の治療をすると歯周病が改善することもわかっています。

まず、歯周病のある糖尿病の患者さんを対象に、2カ月間重点的に歯周病治療を行うグループと、口腔衛生指導のみで歯周病治療を行わないグループに分けて、6カ月後の状態をみたところ、治療を行ったグループでは歯周病の改善とともに、HbA1c(ヘモグロビンA1c)の有意な低下が見られました。
次に、同様に歯周病のある糖尿病の患者さんを対象に、2カ月間これまで以上に積極的に糖尿病治療を行うグループと、そうでないグループに分けて、6カ月後の状態をみました。その結果、口腔内の治療や指導は何も行っていないにもかかわらず、歯周ポケットの中の炎症が明らかに改善していました(*3)。

歯周病と糖尿病は、複合的に治療を行って、負のスパイラルを断ち切る必要があります。
血糖値が高い人や肥満の人、歯周病の疑いのある人は、生活習慣の改善とともに、歯周病対策と糖尿病・メタボ対策の両方に気を配りましょう。

[参考文献]

*1 Taylor, George W., et al. "Severe periodontitis and risk for poor glycemic control in patients with non-insulin-dependent diabetes mellitus." Journal of Periodontology 67.10s (1996): 1085-1093.

*2 Emrich, Lawrence J., Marc Shlossman, and Robert J. Genco. "Periodontal disease in non-insulin-dependent diabetes mellitus." Journal of Periodontology 62.2 (1991): 123-131.

*3 Katagiri, S., et al. "Multi-center intervention study on glycohemoglobin (HbA1c) and serum, high-sensitivity CRP (hs-CRP) after local anti-infectious periodontal treatment in type 2 diabetic patients with periodontal disease." Diabetes Research and Clinical Practice 83.3 (2009): 308-315.

[参考用外部リンク]

(PDF)日本歯科医師会「健康長寿社会に寄与する歯科医療・口腔保健のエビデンス 2015」

和泉 雄一 先生

監修者 和泉 雄一 先生 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 教授)
1979年東京医科歯科大学歯学部卒業、83年同大学院歯学研究科修了(歯学博士)。87年ジュネーブ大学医学部歯学科講師、92年鹿児島大学歯学部歯科保存学講座2助教授、99年同教授を経て、2007年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授(歯周病学分野)。08年東京医科歯科大学歯学部附属病院病院長補佐、14年より東京医科歯科大学副理事、日本歯周病学会理事長。日本の歯周病学・歯周治療学の第一人者。特に、歯周病と全身との関わり、歯周組織再生治療、歯科レーザー治療を専門としており、多数の難治症例を手掛けている。