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受動喫煙による歯周病のリスクは喫煙よりも高い!?

受動喫煙による歯周病のリスクは喫煙よりも高い!?

 喫煙と同様、受動喫煙も歯周病の危険因子になることが国の研究で明らかになりました。喫煙は歯周病だけでなく、全身の健康に悪影響を及ぼします。タバコを吸わない人は受動喫煙を避け、喫煙者は周囲の人に及ぼす悪影響を自覚しておきましょう。

タバコを吸わない男性の受動喫煙で歯周病のリスクが3.6倍に

 喫煙が歯周病の危険因子であることは知られていますが、受動喫煙が歯周病に与える影響についてはあまりよくわかっていませんでした。しかし昨年発表された国の研究調査によって、他人のタバコの煙にさらされる受動喫煙でも、喫煙と同じくらい歯周病のリスクが高まることがわかりました。

 この研究調査は国立がん研究センターと東京医科歯科大学の共同研究グループによるもので、40~59歳の男女1,164人を対象に行われました。対象者を喫煙状況別に6つのグループに分け、それぞれの歯周病にかかるリスクを男女別に調べたところ、男性では次のような結果になりました。

  • 非喫煙者で受動喫煙経験のない人(リスクを1とする)
  • 非喫煙者で受動喫煙経験がある人
    ―家庭のみ 3.14
    ―家庭以外の場所(職場など)のみ  1.31
    ―家庭と家庭以外の場所両方 3.61
  • 過去に喫煙していた人 1.81
  • 喫煙者 3.31

 このように、非喫煙者でも受動喫煙経験がある場合、リスクは喫煙者と同等かそれを上回りました。男性の場合、自分はタバコを吸わなくても、受動喫煙によって喫煙者と同じくらい歯周病のリスクが高まることが明らかになったのです。
 一方、女性は喫煙者の割合が非常に少なかったことなどから、受動喫煙と歯周病との関連を十分に検討することはできませんでした(JPHC Study「受動喫煙と歯周病のリスクとの関連について」)。

タバコの有害物質が歯周病の発生・悪化を促す

(1)歯周病菌の発育が促され、病原性が高まる
(2)血管が収縮して血流が悪くなるため、歯肉(歯ぐき)に酸素や栄養が行き届かなくなり、免疫力が低下する
(3)歯肉の修復に必要な細胞の活性が抑えられる
(4)唾液の分泌が減るため、洗浄・殺菌作用が十分働かず、歯周病菌が増殖する
(5)歯肉が刺激を受けて硬く厚くなる「肥厚」の状態になり、歯周病を発見しにくい

喫煙は歯周病だけでなく、全身の健康に悪影響を及ぼす

 喫煙は歯周病のリスクを高めるだけでなく、歯肉にメラニン色素が沈着して黒っぽくなったり、口臭を強くしたり、口腔がんの原因にもなるなど、口の中の健康状態を低下させます。また全身の健康にも大きく影響し、脳卒中・心臓病などの循環器病や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がんを始めとするさまざまながんのリスクを高めることがわかっています。

 タバコを吸わない人は可能な限り受動喫煙を避けましょう。また、喫煙者は自分だけでなく家族など周囲の人にも悪影響を及ぼしていることを強く自覚する必要があるでしょう。

和泉 雄一 先生

監修者 和泉 雄一 先生 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 教授)
1979年東京医科歯科大学歯学部卒業、83年同大学院歯学研究科修了(歯学博士)。87年ジュネーブ大学医学部歯学科講師、92年鹿児島大学歯学部歯科保存学講座2助教授、99年同教授を経て、2007年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授(歯周病学分野)。08年東京医科歯科大学歯学部附属病院病院長補佐、14年より東京医科歯科大学副理事、日本歯周病学会理事長。日本の歯周病学・歯周治療学の第一人者。特に、歯周病と全身との関わり、歯周組織再生治療、歯科レーザー治療を専門としており、多数の難治症例を手掛けている。