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歯を失わないための歯周病の最先端治療―歯周組織再生治療

歯を失わないための歯周病の最先端治療―歯周組織再生治療

 歯周病は重症になると、歯を失う原因となる病気です。できるだけ重症化する前に対処したいものですが、進行度によっては病巣を取り除く外科手術が必要になることもあります。近年は、欠損した歯周組織を再生させ、歯を失わないですむ新しい治療法も行われるようになっています。

進んでしまった歯周病でもできるだけ歯を残したい

 歯周病になっても、軽度なら適切な歯磨きなどのセルフケアで健康な状態に戻すことができます。しかし、一定以上進んでしまうと歯科医院での治療が必要になり、重症になると歯を失うこともあるあなどれない病気です。
 スケーリング・ルートプレーニングを行っても深い部分のプラーク(歯垢)や歯石を取りきれない場合、歯肉を切開してプラークや歯石を取り除くフラップ手術などの外科手術が行われます。しかし、歯周病が進行し、歯肉(歯ぐき)の退縮や、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)の吸収が進んでしまうと、病巣を取り除いてもすでに歯が保てないことがあります。
 そうなると、かつては抜歯するしか方法がありませんでしたが、近年、破壊された組織を復活させて歯を保つことができる歯周組織再生治療が行われるようになりました。

失われた歯周組織が1年から1年半で再生する最先端治療

 歯周組織再生治療は、フラップ手術などで病巣を取り除いてから行います。現在行われている主な方法には、「GTR法」とエムドゲインゲルを使った「バイオ・リジェネレーション法」の2つがあります。

  • GTR法
     組織再生誘導法ともいい、歯周病で失われた組織のかつてあった空間をGTR膜という特殊な遮蔽(しゃへい)膜で覆って、組織の再生を促すものです。歯肉などの上皮は歯槽骨よりも再生スピードが早いため、そのままだと歯肉が先に再生され歯槽骨などの組織の再生を妨げてしまいます。そこでGTR膜を覆うことで歯周組織が再生するための空間をつくり、歯槽骨と歯肉などの再生を誘導するという方法です。
  • バイオ・リジェネレーション法
     エムドゲインゲルという歯周組織の再生を促す特殊なたんぱく質を歯槽骨がなくなった歯根表面に塗り、組織を再生させる方法です。エムドゲインゲルとは、セメント質の形成にかかわるたんぱく質です。

 どちらの方法でも、手術後1年から1年半ほどで歯周組織が再生します。GTR法は手技的に複雑なため、治療者の熟達度が治療成績にかかわる治療といえますが、バイオ・リジェネレーション法は簡便であるだけでなく、再生される歯槽骨の質がGTR法よりも組織学的に優れている治療法です。

治療法が進歩しても、適切な歯のメンテナンスは欠かせない

 歯周組織再生治療は、だれでも受けられるわけではありません。GTR法は比較的欠損部が広い場合、バイオ・リジェネレーション法は欠損部が比較的狭い場合に行われますが、どちらの方法も治療の適応となるには、組織の残り具合など一定の条件があります。

 また、GTR法は健康保険が適用されますが、行われている歯科医院は限られています。一方、バイオ・リジェネレーション法は、まだ健康保険の適用になっておらず、厚生労働省で承認された一部の医療機関では、「先進医療」として健康保険診療と保険外診療が併用できるようになっています(「先進医療」にかかわる部分の治療は自費で、それ以外の部分は健康保険の適用になります。詳しくは厚生労働省の「先進医療の概要について」を参照してください)。

 再生治療はさらに進歩しており、最近では細胞増殖因子を使って歯槽骨や歯肉をつくろうという試みが、複数の大学病院で行われています。
 とはいえ再生治療を受けても、治療後には定期的な歯科チェックなど、歯の適切なメンテナンスが欠かせません。いずれしろ、「自分の歯」を保つためには、セルフケアとプロフェッショナルケアによる歯周病対策が大切といえるのです。

和泉 雄一 先生

監修者 和泉 雄一 先生 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 教授)
1979年東京医科歯科大学歯学部卒業、83年同大学院歯学研究科修了(歯学博士)。87年ジュネーブ大学医学部歯学科講師、92年鹿児島大学歯学部歯科保存学講座2助教授、99年同教授を経て、2007年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授(歯周病学分野)。08年東京医科歯科大学歯学部附属病院病院長補佐、14年より東京医科歯科大学副理事、日本歯周病学会理事長。日本の歯周病学・歯周治療学の第一人者。特に、歯周病と全身との関わり、歯周組織再生治療、歯科レーザー治療を専門としており、多数の難治症例を手掛けている。