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むせやすい、咳き込みやすい人は「嚥下障害」かもしれません

むせやすい、咳き込みやすい人は「嚥下障害」かもしれません

食事の際の「むせる」「咳き込む」「飲み込みにくい」などは、飲み込む力である「嚥下(えんげ)能力」の衰えのサインといわれています。中高年期から起こりやすく、脳血管疾患などによっても起こります。命にかかわる誤嚥性肺炎も引き起こす「嚥下障害」をよく知り、その予防や改善によい嚥下トレーニング(口の体操)を取り入れましょう。

筋肉の衰えなどで「食べて飲み込む」までの一連の働きに支障が出る

口の中やその周辺には、食べ物を取り込み、こぼさずにしっかり噛めるように歯の上に保持し、よく噛んだうえで飲み込みやすい塊にしてのどに送り、食道から胃へ運ぶ、といった摂食・嚥下にかかわる一連の働きが備わっています。

その働きを支える筋肉が衰えるなどして、口腔機能が低下し、スムーズに飲み込めなくなった状態が嚥下障害です。主な原因は加齢ですが、年齢にかかわらず身体の衰弱がみられる場合も飲み込みにくくなります。また、脳血管疾患やパーキンソン病などの神経筋疾患がある、唾液の減少、むし歯や歯周病がある、自分の歯が少ない、入れ歯が合わない、などが原因で起こることもあります。

嚥下障害は、うまく食べられないだけでなく、次のような病気や状態を引き起こすと考えられており、QOL(生活の質)を低下させ、要介護リスクや死亡リスクの上昇にもつながります。

●口腔機能の低下~嚥下障害が進むと……
誤嚥性肺炎/窒息/構音障害(しゃべりづらさ)/低栄養・脱水/運動機能の低下/うつ・閉じこもり/認知症

嚥下障害があると、命にかかわる「誤嚥性肺炎」を起こしやすい

厚生労働省は毎年『人口動態統計』で、その年の死因順位を公表しています。平成29年版からこの死因統計に使用する分類が変更され、嚥下障害によって引き起こされることがある「誤嚥性肺炎」が新たに加わりました。年間の死亡者数は3万5,740人であり、がん、心疾患、脳血管疾患、老衰、肺炎、不慮の事故に次ぐ7位となっています。

通常、飲食物を飲み込むときには、肺の入り口である気管側は塞がれます。嚥下障害が進むと、気管側が十分に塞がれずに、「誤って」飲食物を気管から肺に「飲み込んで」しまうことがあります。飲食物には、口の中にすみついている細菌などが付着しており、この細菌などが肺に入り込んで炎症を起こすのが誤嚥性肺炎です。とくに飲食物に限らず、唾液を飲み込んだだけでも、唾液に付いた細菌などによって発症する場合もあります。

飲み込む力が衰えた多くの高齢者に誤嚥性肺炎の危険があります。とくに認知症との関連が指摘されており、認知症で寝たきりになり、最後は誤嚥性肺炎で……というケースが珍しくありません。

佐瀬 聡良 先生

監修者 佐瀬 聡良 先生 (佐瀬歯科医院 院長) 1984年日本大学松戸歯学部卒業。89年千葉県千葉市に佐瀬歯科医院を開院し、現職。2004年より日本大学松戸歯学部歯周治療学講座非常勤医局員も兼務。「臨床家のための実践ペリオセミナー」「歯科衛生士のための実践ペリオセミナー」講師なども務める。日本歯周病学会専門医、日本臨床歯周病学会認定医・指導医、米国歯周病学会会員。