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危険なタイプもある「失神」。すぐに回復しても安心しすぎないで

危険なタイプもある「失神」。すぐに回復しても安心しすぎないで

脳全体に十分な血液が供給されなくなって一時的に意識を失う

長時間立っていたときや立ち上がったとき、あるいはアイドルのコンサートなどで興奮したとき、突然、意識を失って倒れてしまうケースがあります。

このような「失神」は、医学的には「脳全体に十分な血液が供給されなくなったために、一時的に意識を失うもの」と定義されています。全国で毎年、約20万人が失神により病院に搬送され、約80万人が受診していると推定されており、決して珍しい症状ではありません。

倒れたときに起こる事故を防ぐことができれば、失神自体は多くの場合、危険なものではないとされています。しかし、命にかかわる心臓病などにつながっている場合もあるため、十分に備えておきましょう。

反射性失神、起立性低血圧による失神なら、トレーニングなどのセルフケアも

失神は大きく3つに分けることができます。全体の約60%を占め、最も多いのは「反射性失神」です。長時間立っていたとき、興奮したとき、激しい痛みを感じたときなどに発症します。排尿・排便、大量飲酒後などにも起こるため、男性がお酒を飲みすぎたときのトイレは、小用でもしゃがんで済ませたほうがよいかもしれません。

このタイプでは、めまいやふらつき感、目の前が暗くなるといった、失神の前ぶれを感じることがあり、その場合、すぐにしゃがんだり、横になることができれば、転倒したり、転倒によるけがを防ぐことができます。また、しゃがんだ姿勢でおなかに力を入れたりして、血圧を上昇させると、失神を回避したり、発症を遅らせることができる、とされています。

また、反射性失神には、起立調節訓練法(チルトトレーニング)という改善のためのトレーニング法があります。壁から約15cm離れて背中を向けて立ち、そのまま壁にもたれて、頭、肩、腰を壁につけた状態で30分間立ち続けるもので、1日1~2回行います。血管が収縮しやすくなって、失神が起こりにくくなると考えられています。ただし、気分が悪くなったりしたらすぐにやめて、医師に相談してください。

もうひとつ、全体の約15%とされる「起立性低血圧」による失神は、名前の通り、立ち上がった直後に、血圧低下によって倒れてしまうタイプです。立ちくらみが強く出て倒れてしまう、ともいえるでしょう。このタイプには、うつむき加減で頭を低くした態勢で立ち上がるようにして、立ち上がった後も頭を低くしたまま少し歩くようにすると、倒れにくくなるとされています。

これら2つのタイプは、倒れたときの事故を防げれば、命には影響しない危険性の低い失神、といわれています。どちらも睡眠不足や運動不足を避ける、水分を十分にとる、お酒は控えめにする、過度なダイエットはしない、といった生活習慣の見直しが大切です。

不整脈などで突然死もあり得る心原性失神に備え、心電図の検査を

注意しなければいけないのは、全体の約15%とみられる「心原性失神」、すなわち不整脈などの心臓病による失神です(残りの約10%は原因不明)。反射性と心原性が混在した失神もみられるようです。

脈が遅くなる不整脈(除脈)や速くなる不整脈(頻脈)、さらには心臓の弁や筋肉の異常などが引き金となって失神を起こし、突然死の恐れもあるとされています。

どのタイプで失神したのかは、心電図などの検査が必要です。一度でも失神したことがあったら、受診して、原因を調べてもらうとよいでしょう。また、目は開いていたか、顔の表情はどうだったかなど、どのようにして倒れたかは、失神の原因を確定するのに重要な手がかりとなります。もし、身近で倒れた人がいた場合は、倒れたときの様子を救急隊員に伝えるようにしましょう。