破裂するまで気づきにくい「大動脈瘤破裂」の怖さ

心臓から全身に血液を送り出す大きな動脈が破裂する怖い病気

先月(2015年11月)、60代の男性俳優が大動脈瘤破裂(だいどうみゃくりゅうはれつ)で亡くなりました。前日まで元気だったという男優の突然の死を招いた大動脈瘤破裂とは、どのような病気なのでしょうか。


大動脈にできたこぶ状のふくらみを大動脈瘤といいます。大動脈は心臓から全身に血液を送り出している丈夫で弾力性のある血管で、心臓から上向きに出たあと弓状に大きく曲がり、胸部から腹部へと胴体の中央を走っています。大動脈の壁は内膜、中膜、外膜の3層から成り、直径が2〜3.5cmもある体の中で最も太い血管です。

大動脈には常に高い圧力(血圧)がかかっているため、弱くなっている部分があるとこぶができやすく、発生する部位によって胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤などに分けられます。

いったんこぶができるとその部分の血管がさらにもろくなり、こぶがどんどん大きくなって破裂に至ります。破裂すると大出血を起こし、命を落とす危険性が非常に高くなります。


大動脈瘤の原因の多くは、動脈硬化によって血管がもろくなることです。そのため、動脈硬化を促進する高血圧や糖尿病、脂質異常症などがある人や喫煙者はリスクが高くなります。

 

自覚症状がなく、健診で偶然発見されることが多い

大動脈瘤の多くは徐々に大きくなるため自覚症状がほとんどなく、健康診断の胸部X線検査や腹部エコー(超音波)検査の際に偶然発見されることが多いものの、見落とされることも少なくありません。腹部大動脈瘤はへその辺りにどきどきと拍動するしこりを触れることで発見されることもありますが、痛みを伴わないため見過ごされたり、太っている人では拍動に気づかないこともあります。

動脈瘤が大きくなると周囲の組織を圧迫し、胸部大動脈瘤では声がれや咳、飲み込みにくさ、胸痛、背中の痛みなどが、腹部大動脈瘤では腰痛や腹痛などがみられることがありますが、この段階ではすでに破裂する危険性が高まっています。


大動脈瘤は一旦できてしまうと自然に小さくなることはなく、有効な薬もないため、破裂を予防することが大変重要です。大動脈瘤を正確に調べるためには、CT検査やMRI(磁気共鳴画像)検査が必要です。危険因子を持つ人は、一度かかりつけ医に相談するとよいでしょう。

 

見つかった大動脈瘤に破裂の危険があるときは、手術が検討される

大動脈瘤が見つかった場合、その大きさや形によっては、血圧を下げる薬で血圧コントロールをしながら経過を観察していきます。しかし、破裂の恐れがあるほど大きい場合は、手術が検討されます。主な手術方法に、動脈瘤の部分を人工血管に置き換える方法と、血管にステントグラフト(金属のバネがついた人工血管)を挿入する方法があります。


動脈瘤破裂は中高年に多い病気ですが、原因となる動脈硬化は、人によっては若いときから始まっています。定期的に健診を受けるとともに、高血圧や高コレステロール、高血糖などを指摘されている人は、治療と生活習慣の見直しで動脈硬化を進行させないことが大切です。喫煙者は禁煙しましょう。