肝“腎”な臓器、腎臓のしくみ
最も重要なことを表す「肝心」という言葉は、かつては「肝腎」と書き表されることが主流でした。肝臓も腎臓も、人体になくてはならない重要な臓器であることから生まれた言葉です。腎臓はどのような働きをしているのか、CKD(慢性腎臓病)になるとどんなことが起こるのか、メカニズムを見てみましょう。
腎臓の中の糸球体という毛細血管により、血液から原尿が作られる
腎臓の主な役割は、血液から余分な水分と塩分、そして老廃物を取り除いて尿を作ることですが、そのときにろ過装置として働いているのが、腎臓内部の「糸球体(しきゅうたい)」です。
糸球体は、一つの腎臓におよそ100万個ほどある、0.1~0.2mm程度の小さい組織で、毛細血管が毛糸玉のようにからまってできています。その血管には小さな隙間がたくさん空いているため、ふるいのような役目を果たします。動脈から流れ込んできた血液が糸球体を通る際に、赤血球やたんぱく質などは血液中に残り、さまざまな物質を含む大量の水分がこし出されて原尿となります。この原尿が尿細管へと流れ込み、体に必要な成分とともに99%が吸収されて血液に戻り、濃縮された老廃物を含む残りの1%が最終尿として排泄されます。
ところが、CKDになると糸球体が傷つき、原尿を作る能力が落ちてしまいます。老廃物を排泄できなくなるために血液中に蓄積し、その毒性によって体に障害(倦怠感や食欲不振、免疫力の低下など)が起きるようになってしまうのです。
血圧や赤血球数の調整など、体内のさまざまな機能を担っている腎臓
また、腎臓は血液の浄化以外にも、以下のような働きをもっています。
- 体内の水分量や電解質を調整することで、体の機能を正常に維持する
- 血圧を調整するホルモンを分泌して、血圧をコントロールする
- 赤血球の産生を促すホルモンを分泌して、赤血球が不足しないようにする
- ビタミンDを活性化し、カルシウムの吸収を助ける
そのため、腎機能が低下すると、水分や塩分が調整できなくなって高血圧(腎性高血圧)となります。その結果、動脈硬化が進み、やがて心血管疾患(脳卒中や心不全など)を引き起こすことがあります。また赤血球の産生が減って貧血(腎性貧血)となるほか、ビタミンDが活性化されず骨がもろくなってしまうこともあります。
しかし、そのような症状が出るのは腎機能が正常の3割未満になってからとされており、CKDが発症・進展していても気づかない人も多いのです。
CKDが起こる原因には、慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)や遺伝性腎疾患のような腎臓自体の病気のほかに、加齢や糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、肥満、喫煙なども関係しています。
次回は、それらの危険因子をもつ人やメタボ(メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満)の人が、CKDの発症や重症化を防ぐために注意すべきポイントを解説します。
協会けんぽ(全国健康保険協会)東京支部では、腎臓の機能低下が疑われる方に対し、受診勧奨のお知らせをお送りしています。詳しくは、東京支部のホームページの「慢性腎臓病(CKD)予防対策を行っています」をご参照ください。