「健康経営」とは何か?
「健康経営®」とは、単に従業員等の健康管理を行うことではありません。従業員の健康づくりを経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づいて従業員等への健康投資を行うことにより、組織の活性化につながり、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されています。
※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること
健康経営とは、2006年に特定非営利活動法人健康経営研究会が商標登録した言葉で、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面でも大きな効果が期待できるとの基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」と定義します。
2013年に、「日本再興戦略」の成長戦略の一つとして、健康経営の考え方が取り入れられて以来、国レベルで普及推進が行われています。2014年度には、健康経営に優れた企業を表彰する「健康経営銘柄」がスタートし、2016年度には日本健康会議が認定する「健康経営優良法人認定制度」が創設されました。また、協会けんぽ(全国健康保険協会)や健保連都道府県連合会といった保険者が実施する「健康企業宣言」もあります。これは、健康優良企業をめざして企業全体で健康づくりに取り組むことを宣言し、一定の成果を上げた場合に「健康優良企業」として認定される制度です(詳しくは、協会けんぽ東京支部の健康企業宣言のページを参考にしてください)。
日本健康会議が定めた「健康なまち・職場づくり宣言2020」では、健康企業宣言等に取り組む企業の目標を2018年度の「1万社以上」から「3万社以上」に上方修正していることからも、右肩上がりに増加していることがわかります。
利益率アップや離職率低下も…さまざまなメリットを生む健康経営
健康経営には、経営者の「雇い方」、管理監督者の「働かせ方」、そして従業員自らの「働き方」を踏まえて、働きがいのある職場や職務を創造することが不可欠です。その結果、生産性の向上や創造性の向上、企業イメージの向上など、さまざまな効果が得られることや、企業におけるリスクマネジメントとしても有効であることがわかっています。
実際に、健康経営を開始した年を「0」として、5年前~5年後の売上高営業利益率の業種相対スコア(業種内において、健康経営を推進した企業の利益率が相対的に高いか低いかを把握する指数)の平均値をみると、「0」地点を境に業種相対スコアが好転していることがわかります(図1)。
図1 健康経営開始前後の5年以内の売上高営業利益率の業種相対スコア*
また、健康経営優良法人2017および健康経営優良法人2018に連続して認定された中小規模法人に行ったアンケートによると、認定されたことによる変化の上位には、「従業員の健康に対する意識向上」のみならず、「顧客や取引先に対する企業イメージの向上」「社内コミュニケーションの活性化」「従業員の仕事満足度・モチベーションの向上」という記載がなされています。そして、健康経営を行っている企業では、離職率が低いこともわかっています(2017年における全国の一般労働者の離職率11.6%に対し、健康経営銘柄2018選定企業では2.7%、健康経営優良法人認定企業では3.8%)。
図2 健康経営の効果フロー*
改正健康増進法や働き方改革関連法、高年齢者雇用安定法などが相次いで成立している昨今、従業員の健康管理を組織戦略に則って展開することは、企業にとって最重要課題といえるでしょう。
当コーナーでは、今号を含めて全6回にわたり、健康経営の基本的な考え方などを詳しく解説していきます。参考にして、ぜひ健康経営に取り組んでください。
*出典:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」(2020年4月)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/180710kenkoukeiei-gaiyou.pdf