従業員による健康経営の推進
「健康経営®」を支える3本の柱は、「経営者」の組織づくり、「管理監督者」の人づくり、そして「従業員」の健康づくりです。従業員には、指示された業務を完遂できるワークリテラシーが必要不可欠。そして、重大疾病などを予防するためのヘルスリテラシーや自己健康投資が求められます。
※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
健康づくりのためには、従業員一人ひとりの時間投資が必要
健康経営では、従業員一人ひとりが、以下のような「健康づくりのための行動」に取り組むことが必要になります。
●健康づくりに必要となる時間の例
【動く】 |
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【食べる】 |
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【寝る】 |
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【学ぶ】 |
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【話す】 |
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【飲む】 |
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【考える】 |
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【受ける】 |
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当コーナーの前回記事で「健康投資」について解説しましたが、上記を実施するには、健診等に必要な利益投資だけでなく時間投資が必要です。それらのリターンとしては、就業持続能力や労働生産性の向上、そして何より重大疾病を予防することによる健康保持があげられます。
健康投資の費用対効果はどのくらい?
厚生労働省の「医療保険に関する基礎資料」の2017年(平成29年)データによると、日本人の生涯医療費は2700万円と推計されています。例えば、現在35歳の男性が、平均年齢に近い79歳まで生存したとすると、残りの人生で必要な医療費は全額で約1550万円となります。また、現在45歳の女性が平均年齢に近い84歳まで生存したとすると、約1610万円となり、自己負担額が1~3割になるとしても高額です。
また、疾病により失うものは、医療費のみならず、大切な自分自身の時間、仕事や働きがいなど数多くのものがあります。一例として脳血管障害を発症したとすると、発症後は医療費だけで約190万円、リハビリテーション代で280万円、家族の交通費や入院に関するサポート費用で18万円、休職3カ月による収入減127万円で、計615万円にものぼります。
復職するまで時間がかかり、本人・家族の身体的・精神的負担も大きくなります。さらに業務用車両を運転している際に発症した場合は、家族や同僚、上司、会社にも大きな影響を及ぼします。
このように、重大疾病を発症してからの経費や心身負担を考えると、発症を未然に防ぐための投資は費用対効果が高いと感じられます。日ごろの健康づくりにおいて、行動変容のインセンティブにつながるでしょう。