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健診受診率100%が健康経営への第一歩。そこから健康課題を見つけよう

健診受診率100%が健康経営への第一歩。そこから健康課題を見つけよう

新年度も始まり、春の健康診断が始まっている会社もあるかと思います。企業(事業者)は労働安全衛生法に基づき、従業員に対して医師による健診を実施しなければなりません。しかし、受診率が上がらなくて困っている、なかなか受診してくれない社員がいるというような状況はありませんか。未受診者には受診を促し、企業として取り組みを強化することが健康経営への第一歩です。

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

なぜ健診を受けないのか、つまずきパターンごとの対策を考える

健診を事業所内で行っていない場合、全従業員に受診してもらえるかというとなかなか難しいところがあります。仕事が忙しい、予約後にキャンセルしてそのままになってしまった、主治医がいて定期的に通院しているなど、理由はさまざまです。ここでは主に考えられるつまずきパターンごとの対策を考えていきます。

①健康診断の本来の役割・意義を知らない

そもそも、従業員自身が法律的に定期健診を受ける義務があることを知らなかった、というケースも少なくありません。このような場合は、会社には年に1回定期健診を行う義務があること、従業員にも受診義務があることなどを伝えるだけで、納得して受診してくれる場合があります。定期健診は病気を早期発見し、治療につなげる目的で行うとともに、従業員が安全に働けるように企業が配慮する「安全配慮義務」に基づいている健診です。安全衛生委員会などで、こうした健診の役割、意義、健診結果の見方を学ぶ場を作ったり、社内で情報発信することで解決する場合もあるでしょう。

②受診してもメリットがないと感じている

次に、健診の重要性を理解してもらいましょう。健康診断は、従業員の命を守り、長く健康にそれぞれの能力を発揮して働いてもらうために行うものです。例えば、高血圧や糖尿病、不整脈などがありながら無理な労働が続くと、突然死を招く可能性があります。もし健診結果でその情報を得ていれば、会社は就業制限等の措置を行うことができます。健診受診は命を守ることにつながる、という大きなメリットを共有しましょう。

③受診することにデメリットを感じている

「健診結果を会社に知られたくない」「忙しくて健診に行く時間がない」など、受診することにデメリットを感じている場合もあります。
健診結果の提出に不安を感じている従業員については、前述のメリットの部分を理解してもらうことや、健診結果で得られた情報に関しては法律に基づき秘密保持義務があることなどを伝えて、安心してもらうこともできます。
業務が忙しくて受診できないという場合は、業務スケジュールと健診日程を調整しやすくしたり、健診車などを利用して職場を会場とするなど、従業員が受診しやすい体制を整えることも必要でしょう。

従業員へ健康づくりや健診への理解を促すような情報発信を

これらの原因や対策は一例です。人事担当者からの受診勧奨や個別対応も大切ですが、従業員自身の健康・健診への自己理解を促すような情報発信、教育の機会を設けるなどの仕組みづくりも重要です。

例えば、事業所全体の健診データから、昨年の受診率や有所見率、喫煙率やメタボ該当率などを公開し、健診受診で何がわかるか、それぞれの検査の目的など、わかりやすく説明するのもよいでしょう。そうした情報をポスターにしてエレベーターホールやトイレなど、社内に掲示したり、イントラネットに掲載するなど、従業員の目に触れるようにします。職場から近い健診機関、人気の医療機関などの情報を発信するのもよいのではないでしょうか。

このように、個々の健康管理、病気への理解が進むことは、企業にとっても従業員にとっても大きな資産になります。当コーナーでは、今号を含めて全6回にわたり、中小企業が健康経営に取り組む際の第一歩となる健康課題の現状把握から、健康管理上の課題への具体的な取り組み方法などを詳しく解説していきます。ぜひ参考にして、健康経営に役立ててください。

関谷 剛 先生

監修者 関谷 剛 先生 (医師/産業医/労働衛生コンサルタント/東京大学 未来ビジョン研究センター客員准教授)
信州大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科内科学卒業し医学博士を取得。東京大学医学部附属病院、国立国際医療研究センター等で診療。その後、東京大学アレルギーリウマチ内科や東京大学医学部分子予防医学講座(現、衛生学講座)で研究。専門は予防医学、免疫学、内科学。現在は東京大学未来ビジョン研究センターライフスタイルデザイン研究ユニットやひいらぎクリニックなどに勤務、予防医学や産業医活動に従事している。