健診データと保健指導を活用して、全社的な健康づくりを
特定保健指導制度を有効活用し、有所見者への健康指導を行いましょう。また、「異常なし」の従業員の健康レベルの改善も必要です。一人ひとりに健康的な行動を心がけてもらうために、全社的にどのような取り組みを行うかを考えていきましょう。
※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
健診結果を活用して、健康リスクが高い人を中心に声がけしよう
健康診断は、受診することが目的ではなく、健診結果をその後の健康づくりに役立てなければ意味がありません。健診結果で「要精密検査」や「要治療」など、医療機関の受診が必要と判定されながらも、「忙しくて時間がない」「休みがとりにくい」といってなかなか受診しない従業員も少なくありません。それでは、せっかく健診を受けたことが無駄になってしまいます。
こうした従業員に対しては、健康管理の大切さを理解してもらい、会社として欠かせない人材であることを伝えることが重要です。それでも受診してもらえない場合は、就業規則などに「必要に応じて健康診断の再検査を命じる」旨の規定を設けることや、就業時間内の受診を認めて交通費を支給する、検査を受けるための休暇制度を設けるなど、該当者が受診しやすい環境を整えるということも検討しましょう。
また、外部の支援機関の相談窓口を活用することも有効です。産業医や保健師がいる企業においては、会社の環境を理解したうえで保健指導ができる、それらの専門家と連携しましょう。産業医や保健師がいない場合でも、従業員50名未満の事業所は地域産業保健センターに相談すれば、無料で医師のもと保健指導を受けられます。
ハイリスク者だけでなく、健診結果の数値が正常範囲内であっても、年々悪くなるような従業員へも健康相談や保健指導を促し、治療が必要な状態になる前に生活習慣病の予防や早期治療につなげるようにすると、さらによいでしょう。
中小企業こそ活用したい特定保健指導制度
保健指導には、会社ではなく協会けんぽ・健保組合等の保険者が行う「特定保健指導」もあります。いわゆるメタボ健診と呼ばれる特定健診では、生活習慣病予防のためにメタボリックシンドロームに着目した健診を行い、生活習慣病の発症リスクが高い受診者を対象に、保健師や管理栄養士などが生活習慣を見直す特定保健指導を行っています。対象年齢は40歳から74歳までですが、常勤の産業医がいない中小企業こそ、特定保健指導の機会を活用しましょう。
ここでよく課題となるのが、特定保健指導の実施率の低さです。特定保健指導は会社が強制的に受けさせることはできませんが、積極的な勧奨が望まれます。具体的には、上長から「特定保健指導の対象者は積極的に受けるように」というメッセージを出すという方法があります。それに加えて、その企業のこれまでの特定保健指導の実施率の推移と、今後の目標を明示するとよいでしょう。また、就業時間内や事業所内で保健指導を受ける仕組みを作ることができれば、保健指導を受ける従業員の増加も期待できます。
社内外で連携して職場の健康課題を知り、健康づくりを始めよう
保健指導は、健診で所見のある従業員の健康改善を目的としていますが、健診で異常なしと判定された従業員の生活習慣病予防や、事業所全体の健康レベルの改善には、健診結果の集計・分析を行うと効果的です。労働基準監督署に提出する健診結果報告書の有所見率の推移をまとめるだけでも、事業所の健康状態の特徴が確認できます。
例えば、平均年齢が高い事業所は、高血圧の人の割合が高い傾向があるといった特徴があります。このような課題に、事業主や健康管理担当者のみで対応することは大変です。前述した社内外の専門職の相談窓口などを、ぜひ活用してみてください。
こうした事業所の傾向を踏まえて、全従業員を対象とした健康づくりのための取り組みを企画検討しましょう。一例として、階段の使用を促す、座りながらできるストレッチを紹介する、といった簡単なことからスタートしてみましょう。まずは、取り組みやすいことから始めるのが成功の秘訣です。