慌てないで…メンタルヘルス不調者への対応と復職サポート
メンタルヘルス対策は職場の健康管理上の大きな課題といわれていますが、中小規模の事業所では、実際に従業員がメンタルヘルス不調となって休職するケースは、必ずしも頻繁にあるわけではありません。部下のメンタルヘルス不調を経験したことがない上司は、相談されたときに対応方法がわからず困ってしまうことが多くあります。このようなケースが生じた場合、主なポイントとして①不調者が安心して休職できる環境をつくること、②十分な回復を待って職場に復帰させること、③復帰後も一定期間、業務の調整を行うことがあげられます。
不調者が安心して休職できる環境づくり
従業員が、心の健康問題により休職し療養する場合には、診断書を提出するなどの休職の手続きとともに、療養に専念できる治療環境を整えることがとても重要となります。本人の休職への不安を和らげるためにも、休職にかかわる社内制度(休職可能期間や賃金、職場復帰の制度、連絡窓口、傷病手当金など)や今後の見通しは必ず伝えるようにしましょう。これらの情報は『休職のしおり』などとして冊子にまとめておき、本人に渡しておくとよいでしょう。
休職している間は、会社からの連絡は事務手続き上必要な事項に限るようにします。業務について不明な点を問い合わせたり、会社の状況を知らせることは、罪悪感を強く感じさせたり、ストレス要因から距離を置くことができなくなり、体調の回復を妨げます。また、本人からの定期的報告も、負担を軽減するために、主治医を受診した後にメールで簡単に行うといった方法を取るようにしましょう。本人の連絡先のほか、家族の連絡先についても聞いておき、休職期間中に本人と連絡が取れなくなった場合には、家族に連絡する旨をあらかじめ伝えておくと、もしもの時の対応もスムーズになります。
復職の際は必要に応じて主治医と連携し、段階的な復帰プランを作成
本人が職場復帰の意思を示したら、主治医に相談するように促し、主治医の許可が出れば、職場復帰可能の診断書を提出するように伝えます。その際には、必要な就業上の配慮等を含めた「職場復帰に関する意見書」を作成してもらうと、今後の方針を決めるうえでも役立ちます(「こころの耳」サイトからもダウンロード可能)。
産業医がいる場合は、産業医を通じて主治医との連携を図りましょう。また、本人との面談を踏まえて産業医から意見書を出してもらい、主治医の診断書なども参考に、最終的な職場復帰可否の判断を人事担当者等が行います。
最終的な職場復帰の決定前に、「職場復帰支援プラン」を作成しておくことも再休業を防ぐ重要なポイントとなります。休職者が復職する際には、業務負荷を一定期間軽減し、3~6カ月間を目安に徐々に元に戻していく段階的な職場復帰がすすめられます。復帰後数カ月間の具体的な業務内容については上司がプランを作成し、その内容を産業保健スタッフや人事担当者で確認・調整していくことが望ましいでしょう。
休職者本人にとっては、仕事をしながら治療を継続してさらに回復を図ることになり、体調と業務負荷のバランスをとることが重要になります。必要に応じて主治医へ情報提供したり、主治医から情報を得たりすることで、治療の質の向上や業務上の適切な配慮につなげましょう。もちろん主治医との連携にあたっては、従業員本人の同意を得るなど、個人情報保護の手続きを確実に行う必要があります。
国の手引きを参考に、職場復帰支援プログラムなど体制づくりを
このように、メンタルヘルス不調による休職者が出た際は、休職開始時から休職中、そして復職の手続き、復職後のサポートと、さまざまな対応が必要になります。まずは、会社で規定を作成するなど、復職支援の仕組みを整理して運用することが、メンタルヘルス対策の基礎となります。その際は、国の示した復職支援の手引きを参考にしましょう。復職支援の仕組みができれば、今後の事例発生の予防を図る積極的な取り組みにつなげていきやすくなります。