テレワークにおける従業員の心身の健康管理
新型コロナウイルス感染症対策の一つとして、テレワークを導入した企業が増えています。出社機会が著しく減少したことで、企業は従業員の心身の健康管理を把握する難しさを感じていることと思います。これまでとは異なるアプローチで健康経営に取り組む必要があります。
※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
ウィズコロナにおける従業員の健康課題
テレワークは、感染防止やワークライフバランスの改善に一定の効果があるものの、企業にとっては、従業員の労働環境や健康状態を把握できないというデメリットがあります。職場でならきちんと仕事ができる人も、生活空間では気が緩みがちになり業務に集中できなかったり、逆にオーバーワークを招くこともあります。テレワークは、単に労働時間や業務内容の把握が難しいだけではなく、コミュニケーションの機会が減り、従業員の顔を直接見る機会が減るため、会話や見た目から体調不良を推察することが難しいといった問題もあります。
また、自粛生活の長期化により、運動不足や体重増加、生活習慣病の悪化等が懸念されます。仕事とプライベートの切り替えがしにくいため、かえって気持ちが休まらないための精神的疲労や、コミュニケーション不足による孤立感、不安感の増大など、メンタルヘルス面での問題も危惧されます。
さまざまなツールによる心身の健康管理
従業員がこのような健康問題を抱える前に、企業側は対策を講じる必要があります。従業員の状況を把握する方法としては、定期的にウェブ会議ツールやチャットシステムなどを使って、上司と部下がコミュニケーションを行う場を設けることが有効です。業務報告や個別の相談などをオンライン上で実施し、些細な質問や悩みを話せる環境を構築しましょう。上司は部下に仕事の負荷がかかりすぎていないかを常に確認し、部下の心身の健康にも気を配る意識が必要です。
また、テレワークにおける心身の健康管理の問題を解決するため、さまざまなツールがあります。タイムトラッキング(時間管理)ツールは過重労働を防止し、労働時間の適切な把握をするのに役立ちます。他にも、健康管理アプリなど、メンタルの不調や健康リスクを予測できるツールがあります。企業による従業員の健康管理に対する方針によって、適したアプリを導入するのもよい方法です。万一、深刻な体調悪化の疑いがある人が発生した場合は、専門職への相談が必要です。産業医や産業保健師などと契約したり、地域産業保健センターを活用したりして、医療専門職と相談できる体制を整えるようにしておきましょう。
特に、地域産業保健センターは労働者数が50人未満の事業所であれば、無料で産業医や保健師による健康相談や長時間労働の面接指導などを提供してくれます。心配になったときに早めに専門職に相談できるような体制は、従業員が安心して働ける環境づくりにもつながります。相談窓口や体調管理の情報を従業員に伝えておくことにより、さらに働きやすい職場の形成につながるでしょう。
新しい取り組みと従業員個人の意識づけが必要
コロナ禍の不安が長期化し、さまざまな行動が制限される状況下では、テレワークによって従業員の体調不良やメンタル不調が引き起こされる事態にもなりかねません。そのため、企業には従業員の健康管理に以前よりも一層気を配る必要があります。
テレワークをする従業員の健康管理を行うためには、オンラインツールなどを利用したさまざまな新しい取り組みと、個人の意識づけが必要です。従業員が心身ともに健康で働ける環境を整えることは、健康経営を進めるうえで非常に重要です。会社全体の認識を深めていきましょう。