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健康企業宣言・健康経営優良法人認定取得に向けて

健康企業宣言・健康経営優良法人認定取得に向けて

この連載では、従業員の健康管理に加えて健康経営を実際に進めるうえでの実践的な取り組みについて解説してきました。これらの取り組みを実践していくことで、会社の制度や組織的な対応が進み、従業員のヘルスリテラシーや健康レベルの向上が期待されます。

しかし、どの程度改善したかを評価しないと、実際の変化は確認できません。また、今後の健康管理上の課題も明確にはなりません。健康企業宣言(健康優良企業認定制度)・健康経営優良法人認定制度では、健康管理に関する取り組み状況を確認するための認定要件が示されています。申請を行うプロセスで認定要件を確認することで、自社の取り組みが十分行えているかを評価することにもつながります。まだ認定取得に向けてチャレンジしていない企業は、この機会にぜひ挑戦してみてください。

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

経営者の健康経営への理解が不可欠

経済産業省が2014年度に「健康経営銘柄」の選定を開始し、2016年度からは健康経営優良法人認定制度を創設したことにより、健康経営の認知度はさらに高まりました。経済産業省は、企業がこの認定を受けるメリットについて、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として、社会的に評価を受けられることを挙げています。経営者にとっては、対外的活動や採用活動へのイメージアップなどの期待もあり、年を追うごとに認定を申請する企業が増えています。

しかし、積極的に健康経営に取り組んだ結果として認定を受ける場合はよいのですが、経営者が健康経営についての理解がないままに認定取得を部下に指示するケースも少なくないようです。経営者が先頭に立って健康経営を進めていくことが肝心です。

健康企業宣言(STEP1銀の認定)の申請から認定取得までの流れ

それでは、今回は実際に健康企業宣言(STEP1銀の認定)に申請する想定で、具体的に必要な事項を整理してみましょう。

①チェックシートで課題の確認→健康企業宣言にエントリー
健康経営の出発点は「現状チェック」から始まります。協会けんぽのホームページにあるチェックシートで御社の健康づくりの取り組み状況をチェックしましょう。点数の低いところが健康課題となります。応募用紙に取り組み項目や必要事項をご記入いただき、協会けんぽ東京支部にFAXにて送信してください。ご応募いただいた後、約1~2週間で「宣言の証」が届きますので、社内に掲示などして従業員に周知のうえ、実際に取り組みを始めてください。

②健康づくりをスタート→達成状況をチェック
健康企業宣言をもとに6カ月以上取り組んでもらいます。「健康企業宣言実施結果レポート」で、達成状況をチェックしましょう。80点以上になるまでチャレンジを続け、クリアしたら実施結果レポートを協会けんぽ東京支部に郵送しましょう。

③STEP1達成で次のステップへ
80点以上で「銀の認定証」が届きます。次のSTEP2や健康経営優良法人認定にチャレンジしましょう。

認定取得は健康経営実践の“結果”である

中小企業では、健康経営に関心はあるものの、マンパワー不足やコスト増への懸念、健康投資の効果の不透明性などが原因となり、実践に及び腰になっている企業もあるかと思います。しかし、生産年齢人口の減少に伴い、働き手が不足するなか、人材確保の観点からも中小企業で健康経営を進める意義は大きいです。

また、健康経営を進めていくうえで大切なことは、健康企業宣言・健康優良法人の認定はあくまでも健康管理活動が適切に行われている結果として得られるものであるということです。もしすぐに取得することが難しい場合でも、取得基準を自社の制度に組み込むなどして、健康経営に反映することは可能です。そのため、認定をゴールとせず、企業としてどのような健康経営を進めていきたいかというビジョンを見据えた取り組みに、本制度を活かしていきましょう。

関谷 剛 先生

監修者 関谷 剛 先生 (医師/産業医/労働衛生コンサルタント/東京大学 未来ビジョン研究センター客員准教授)
信州大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科内科学卒業し医学博士を取得。東京大学医学部附属病院、国立国際医療研究センター等で診療。その後、東京大学アレルギーリウマチ内科や東京大学医学部分子予防医学講座(現、衛生学講座)で研究。専門は予防医学、免疫学、内科学。現在は東京大学未来ビジョン研究センターライフスタイルデザイン研究ユニットやひいらぎクリニックなどに勤務、予防医学や産業医活動に従事している。