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いざ、健康企業宣言! チェックシートで問題点を洗い出そう

いざ、健康企業宣言! チェックシートで問題点を洗い出そう

健康企業宣言に、経営者が本気で取り組み、高い成果を上げた成功例は多数あります。その一方で、まだハードルが高いと感じていたり、どうしたらいいかイメージがつかめないご担当者も多いでしょう。

そこで、当コーナーでは、従業員40人程度の架空の会社「きょうかい株式会社」において、これから健康企業宣言に取り組むという設定で、具体的な方策について解説します。これを読んでシミュレーションしていただき、実際の健康経営にお役立てください。

※「健康経営」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

健康企業宣言STEP1のチェックシートで、現在の職場の状況を確認

「きょうかい株式会社」は健康企業宣言を行い、「健康優良企業認定」を目指すことになりました。健康経営担当者に任命されたケンポウさんは、何から始めればよいのか頭を悩ませています。そこで、まず協会けんぽのホームページを確認し、健康企業宣言STEP1のチェックシートをもとに「きょうかい株式会社」の現在の状況を把握することから始めることにしました。

チェック項目

① 従業員の皆様は健診を100%受診していますか?

② 40歳以上の従業員の健診結果を、協会けんぽへ提供していますか?

③ 健診の必要性を従業員へ周知していますか?

④ 健診結果が「要医療」など再度検査が必要な人に受診を勧めていますか?

⑤ 健診の結果、特定保健指導となった該当者は、特定保健指導を受けていますか?

⑥ 職場の健康づくりの担当者を決めていますか?

⑦ 従業員が健康づくりを話し合える場はありますか?

⑧ 健康測定機器等を設置していますか?

⑨ 職場の健康課題を考えたり問題の整理を行っていますか?

⑩ 健康づくりの目標・計画・進捗管理を行っていますか?

⑪ 従業員の日頃の飲み物に気をつけていますか?

⑫ 従業員の日頃の食生活が乱れないような取り組みを行っていますか?

⑬ 業務中などに体操やストレッチを取り入れていますか?

⑭ 階段の活用など歩数を増やす工夫をしていますか?

⑮ 従業員にたばこの害について周知活動をしていますか?

⑯ 受動喫煙防止策を講じていますか?

⑰ 従業員の心の健康に関する取り組みをしていますか?

⑱ 気になることを相談できる職場の雰囲気を作っていますか?

自社の課題が明らかに。健康づくりの新たな一歩を決意

ケンポウさんは、最初の項目の「健診受診率100%」から壁に突き当たってしまいました。

「う~ん。なかなか受けてくれない人がいるんだよな……」

質問①~⑤は、健診の受診勧奨や健診結果の活用、特定保健指導の実施についての質問です。労働安全衛生法に基づき、事業主は従業員に健診を受けさせる義務があるため、まずはここからクリアしなければいけません。

質問⑥~⑩は、健康づくりのための職場環境について。ケンポウさんは、従業員同士で健康づくりについて話し合う必要もあることを知りました。

「これはなかなかハードルが高い……。でも、従業員同士のコミュニケーション促進にもなるな」

職場の安全と健康についての年度計画や実践に関するミーティングを実施し、話し合いの場を作ろうと考えました。また、社長に血圧計の購入を提案し、今後利用について全体に周知することとしました。

質問⑪~⑯は職場の「食」「運動」「禁煙」についてです。これまで、これらは個人的な問題として関知してこなかった「きょうかい株式会社」。しかし、デスクワーク中心のための運動不足や、昼食を菓子パンなどで適当に済ませている社員も多くみられ、入社後に太った社員も少なくありません。いざ健康経営の取り組みを進めていくうえでは、会社ぐるみで従業員の健康を考えていかなければならないのでは、とケンポウさんは改めて感じました。

最後の項目の「心の健康」についても、また然り。メンタルヘルス対策は、職場の健康管理上の大きな課題といわれていますが、「きょうかい株式会社」では、幸いメンタルヘルス不調となって休業するケースがこれまでになかったため、特に何も対策をしていませんでした。

「チェックシートに沿って確認してみたけれど、問題は山積みだぞ」

現状は、合格点にはほど遠い「きょうかい株式会社」ですが、自社の課題が見えてきたケンポウさんは、前向きな気持ちで健康づくりの新たな一歩をスタートさせることを決意したのでした。

岡田浩一 先生

監修者 岡田邦夫 先生 (特定非営利活動法人 健康経営研究会 理事長)
1951年大阪市立大学医学部卒業、1982年大阪ガス株式会社産業医、2006年特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、2007年大阪経済大学人間科学部客員教授、2010年大阪市立大学医学部臨床教授、2014年プール学院大学教育学部教授、2018年大阪成蹊大学教育学部教授を歴任、2017年より女子栄養大学大学院客員教授。日本産業衛生学会指導医、労働衛生コンサルタント。著書に『安全配慮義務』(産業医学振興財団)、『健康経営推進ガイドブック』(経団連出版)、共著に『なぜ「健康経営」で会社が変わるのか』(法研)などがある。