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健診受診は基本のキ。めざすは受診率100%!

健診受診は基本のキ。めざすは受診率100%!

健康企業宣言に、事業主(経営者)が本気で取り組み、高い成果を上げた成功例は多数あります。その一方で、まだハードルが高いと感じていたり、どうしたらいいかイメージがつかめないご担当者も多いでしょう。

そこで、当コーナーでは、従業員40人程度の架空の会社「きょうかい株式会社」において、これから健康企業宣言に取り組むという設定で、具体的な方策について解説します。これを読んでシミュレーションしていただき、実際の健康経営にお役立てください。

※「健康経営」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

あの手この手の健診受診率向上策

事業主は、労働安全衛生法第66条に基づき、従業員に対して、医師による健診を実施しなければなりません。また、従業員は、事業主が行う健診を受けなければなりません。ところが、「きょうかい株式会社」では、健診を受けてくれない従業員が数名いるのが現状です。健康経営担当者のケンポウさんは、企業として健康経営の取り組みを強化する観点からも、未受診者には受診を促す必要性を感じました。

「そもそも、健診を受けない人は、なぜ受診してくれないのだろう」

きょうかい株式会社は、健診を事業所内で行っておらず、従業員は自ら健診代行業者に予約をして受診する必要があります。時間がない、予約後にキャンセルしてそのままになってしまった、主治医がいて定期的に病院に行っているなど、受診しない理由はさまざまでしょう。健診を受けることは、病気の早期発見や予防の観点からとても大切ですし、かかりつけ医では行わない検査もあるため、必ず受けてほしいものです。ケンポウさんは、どうしたら受診率100%を実現できるのか、対策を考えてみました。

①申込期間を短くし、リマインドを促す

まず、健診の申込期間は一定の期間に区切り、長くても4週間くらいにしました。申込期間が長くなると、まだ時間があるから大丈夫と思い、申し込みを忘れる人がいると考えました。また、未申込者にはリマインドメールを送るなど、フォローすることとしました。

②健診の重要性や人気の健診機関情報を提供

次に、健診の重要性を理解してもらう必要があると考えました。まず、がんや生活習慣病の解説とともに、事業所全体の健診データから、昨年の受診率や有所見率などを公開。さらに、健診受診で何がわかるのか、それぞれの検査の目的や見つかりやすい病気について、簡単に解説した資料を社内掲示板に掲載しました。また、職場から近い健診機関、受診時間の目安、多くの従業員が受けている人気の健診機関を紹介するなど、従業員にとってメリットのある情報の発信も検討しました。

③受診しやすい体制を整える

業務が忙しくて受診できないという従業員には、管理職の協力のもと、業務スケジュールと健診日程を調整するようにしました。また、健診車を派遣してもらい職場で受診できるようにすることも検討し、引き続き受診しやすい体制を整えることとしました。

これらの施策を講じることによって、次年度の受診率は100%になることをケンポウさんは強く願ったのでした。

岡田浩一 先生

監修者 岡田邦夫 先生 (特定非営利活動法人 健康経営研究会 理事長)
1951年大阪市立大学医学部卒業、1982年大阪ガス株式会社産業医、2006年特定非営利活動法人健康経営研究会理事長、2007年大阪経済大学人間科学部客員教授、2010年大阪市立大学医学部臨床教授、2014年プール学院大学教育学部教授、2018年大阪成蹊大学教育学部教授を歴任、2017年より女子栄養大学大学院客員教授。日本産業衛生学会指導医、労働衛生コンサルタント。著書に『安全配慮義務』(産業医学振興財団)、『健康経営推進ガイドブック』(経団連出版)、共著に『なぜ「健康経営」で会社が変わるのか』(法研)などがある。